【多数決を疑う】政治の運営手法は改善できる
多数決というと、いかにも多数派の意見が尊重されそうですが、多数決が本当に「多数派の意思」を尊重しているのかというと、極めて怪しいのです。
そこが聞きたい:多数決の結果は民意の反映か 坂井豊貴氏 – 毎日新聞
民主主義は多数決を要求しない!
この本は政治の話をする。でも政治の “手法” の話だ。仕組みの話。対中国政策がどうだとか、対米国政策がどうだとか、そういった個別具体的な話題を取り扱わない。代わりに、国民の意見をいかにして国政に反映するかといった手法について取り上げる。
日本の政治は民主主義だ。確かに選挙は投票による多数決で政治家を選出する。一見すると民主的に見える。しかし、国民の意見を抽出するのに、ほとんど多数決しか使われていない。でも「多数決」以外の方法もあるのではないか?
本書では特に「ボルダルール」という投票手法について力点をおいて解説されてる。ボルダルールは多数の候補の中から 1 つを選び出すのに向いている方法で、これは多数決より優れてる。なのに日本の政治では使われていないね。
選挙を科学する
選挙とは何か。こう言い換えられる。「多数の参加者がいて、いくつかの選択肢がある。参加者はそれぞれ独自の価値観を持って、選択肢に優劣を付けている。ただ、参加者全体で選び取れる選択肢は全てではない (単純には 1 つだけ、とか)。さて、どれを捨てて、どれを採用するか?」こんな問題だ。で、「多数決」という方法は「1 人 1 点の持ち点で、選択肢のどれかに点を入れる (どれにも入れないことの可能)」という方法。
先にも紹介した「ボルダルール」は「多数決」とは違う方法で投票する。話を簡単にするために選択肢を 3 つと限定して、最終的に 1 つを選び出すという状況だとしましょう。この場合、ボルダルールは「1 人 6 点の持ち点。1 番良いと思うものに 3 点を、2 番目には 2 点を、3 番目には 1 点を入れる」というもの。配点は固定。1 番の選択肢に 5 点、2 番に 1 点、3 番に 0 点というのはナシ。
このように定式化を進めると、選挙を数学的に取り扱うことが出来る。「多数決」「ボルダルール」他にも「コンドルセ・ヤングの最尤法」「繰り返し最下位消去ルール」など、いろいろな集約ルールについて、数学的な指標に基づいて比較検討している。集約ルールとは、民意を抽出する方法のこと。多数決はその一種。この本の重要な主張の 1 つは、「多数決は、数ある集約ルールの中でも、特に精度の悪い酷いものだ」ということ。
ペア勝者規準、ペア勝者弱規準 (この本だけの用語)、ペア敗者規準、棄権防止性、中立性。それぞれ数学的に定義された厳密な概念。これらを満たすのか、満たさないのかを見ることで、多くの集約ルールを比較できる。そして「多数決」という、広く一般に使われている集約ルールは決して優れていない。優れていないのに広く使われている理由は、惰性でしか無いでしょうね。
多数決の廃止は実現しないのかな?
「集約ルールの科学」は、社会的選択理論と呼ばれる学問分野として確立しているそうだ。もう少し関連する本を読んで知識を増やしたい人のために、調度良く本の終わりに副読本を推薦していた。その中でも『社会的選択理論への招待 : 投票と多数決の科学』は面白そうだ。
長く続けられた集約ルールの研究の成果を、利用しないのは勿体無い。「政治は、このように運営されるのがより良いだろう」という理想は、次第に明確になってるはずだ。多数決は、数ある集約ルールの中でもかなり出来が悪い。そんなものを使い続けるのは時間の無駄だし、民主主義の形骸化に繋がる。僕はこの本を読んで、もっと政治はシステマチックに運営されるべきだと強く感じた。
僕は大学生くらいの頃から (やっと)「政治って何だろう?」と興味を持つようになった。とは言え別に自分で調べて何かを獲得するような能動性は無くて、Twitter でフォローしてる人がツイートしたニュースを読んで、現状について少し知る、と言った程度。でも投票に行けるときはどの選挙にも投票に行ってるし、選挙の際は普段よりは意識を向けてる。政治に全く無関心というわけではないんです。
僕はこの本を読んで初めてこの学問分野を知ったけど、とても面白くて極め甲斐のある学問だと感じた。『多数決を疑う 社会的選択理論とは何か』はとても示唆に富む良本で、社会的選択理論への導入として凄く良いものでした!さらに知識を深めたいと思ったけど、紹介された副読本『社会的選択理論への招待』は Kindle 版が出てない!僕は紙の本を持ち歩きたくないので、まだ買ってません。うぅむ、早くこれの Kindle 版出ないかなぁ…