貴弘Loveすとーりー。~チェリーよ立ち上がれ~

貴弘(17)は迷っていた。この分厚い屋上の扉を開けば、彼女がいる。
彼女とは、貴弘の一個上の先輩で、この学校始まって以来の女性生徒会長であり、天正遣欧使節の一員であるマンショのことである。
マンショは生徒会長というだけあって、強気でみんなをグイグイと引っ張っていくタイプの女性だ。
そんなの姿を垣間見てけり貴弘はマンショに一目惚れしてしまったのだ。
そして、今日、貴弘は彼女を呼び出し、思いの丈をぶつけようとしていた。
意を決して扉を開き、屋上に出る貴弘。そこには、彼女が待っていた。
最初に口を開いたのはマンショの方だった。
『一体、何の用なの?』
いつも通り勝ち気な雰囲気を漂わせているマンショ。いつものように十字架を背負っている。実に重そうだ。
暫くの沈黙の後に貴弘が話し始めた。
『ぼ、僕と……』
緊張のあまり、言葉が続かない。心臓だけでなく、大腸くらいまで口から出てきそうだ。
『僕と、僕と……つ…つ…』
あまりにも言葉が出ない貴弘にマンショは苛つく。
『もう、何なの。教会のミサがあるから、ミゲルとジュリアンを待たせてるんだけど!』
語気が荒くなるマンショ。
しかし貴弘には一向に改善の兆しが見られない。
マンショは大きくため息をつくと、『もう、訳分かんない』と言って校舎に帰ろうとする。
それを見た貴弘はようやく、吹っ切れ、今にもドアを開けようとするマンショに大声で言った。
『僕と付き合ってください!』
ようやく伝えた貴弘の全力の思いにも、マンショは冷たい反応を示す。
『そんなことを言うためにわざわざ呼び出したの?さっきも言ったけど私には時間は無いの!』
『でも、僕は本気なんです!どうか付き合ってください!』


『だから、私には時間が無いの』
『いや、でも……』
『何度も言わせないで私には時間が無いの!』
『いや……』
『時間が無いのよ!私には。』
そう言ってマンショはこう続けた。
『私には時間が無いの、だから、………………………………………………………………………早くキスして』
貴弘の脳内にスピッツのチェリーとYUIのC.H.E.R.R.Yがほぼ同時に流れた。
その日から二人はお互いのことを“ナリナリ”“マンショ”と呼び合う仲になった。

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