サツキとメイ。

ミノルは緊張していた。
今日は作文の発表会である。一番良い作文を書いた人には賞状と水戸への7泊8日ペア宿泊券が贈られる。
次はミノルの番だ。ミノルは席を立ち上がり、作文を読み上げた。
『題名、第三身分』
『タイトルの通り、第三身分について書こうと思ったのだが、第三身分について何も知らないので、僕の家族について書こうと思います。
僕のお父さんは外国の人です。料理はいつも素手で食べます。
僕が真似したら『右手を使いなさい。左手はお尻を拭くためにあるのだよ』と教えてくれました。どうやら、お父さんが生まれた国では、右手でご飯を食べ、左手でお尻を拭くらしいです。
でもお父さんはトイレから出た後、両手で肛門をいじっていました。
僕のお母さんはいつもフランクフルトを頬張っています。口一杯に頬張っています。ですが、お母さんはフランクフルトが死ぬほど嫌いな様です。いつも泣きながら食べています。
お母さんはいつも、ぼくにこう言ってくれます。
『あっ!今、エッチなこと考えたでしょう?』
お兄ちゃんは最近、一人暮らしを始めて、あまり家には居ません。ですが、いつも『風俗王に俺はなる』と語ってくれます。
これが僕の自慢の家族です』
教室中から割れんばかりの拍手が巻き起こった。
それを聞きながらミノルの意識はどんどん薄れていった。


目が覚めたらミノルはいつもの布団の上に横になっていた。
『なんだ。夢か』
夢じゃなかったら洒落にならない様な夢だった。あんな家族だったらすぐに家出を考えるだろう。
起き上がると一階から階段をかけ上がる音がする。おそらく母だろう。
勢い良くドアが開くとやはりそこにはお母さんが立っていた。だが何かが変だ。ゆっくり見ていくと、ミノルの顔からどんどん血の気が引いていった。
お母さんの口一杯にフランクフルトがくわえられていた。
『わぁー!!』
ミノルは泣きながら家を飛び出そうとした。
階段をかけ降り、玄関から外へ出ようとすると、壁に掛かる一枚の写真に目を奪われた。
そこには、両手で肛門をいじる父と、泣きながらフランクフルトを頬張る母との間に、満面の笑みを浮かべて発表会の賞状を広げるミノルの姿があった。
ミノルはその場に立ち尽くし、涙を流しながらこう言った。
『夢だけど夢じゃなかった』

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