本当にあったら怖い話。

これは僕が小学校5年生の夏休みの頃の話しです。
僕は母方の祖父が危篤ということで、母親の実家に見舞いがてら、夏休みということもあって泊まりに行ってました。
祖父は極度の病院嫌いということで入院はしておらず、自宅で医者に来てもらい診療を受けてました。
当時まだ子供だった僕は、最初の内は静かに祖父のお見舞いが出来たのですが段々と飽きてきて、母親に『ねぇどっか連れてって』とねだり始めたのです。空気の読めない僕に母親は半ば怒りながら『外にでも行ってなさい』と言って僕を部屋から追い出したのです。
しかし、1階2階といろいろ探してみましたが祖父の家には遊び道具と呼べるものはほとんど無く、僕は余計に退屈してしまいました。
仕方なく僕が祖父の部屋に戻ろうと1階への階段を下りて長い廊下の突き当たりにある部屋を目指して歩いていたときです。
突然、僕の1mくらい先の部屋のドアが開いたのです。些細なことながら唐突に起きた出来事に僕が驚き廊下に立ち尽くしていると、中から黒い得体の知れない“影”の様な物が出てきました。
その時には僕の体はもう既に金縛り状態になっていました。
不意に、ゆっくりと部屋から出てきたその“影”が心なしか僕のことを見ている、睨み付けている様な気がしました。
僕は泣きそうになりながら動かない体を動かそうと必死に目をしばたかせ、金縛りを解こうとしていました。
しかし、僕の意に反して体は全く動かず、痛みを感じる程にまでなっていました。
目の前の黒い影が僕に近づき始めました。近づいてくるにつれて、僕の周りの空気はどんどん冷たくなっていき、体は完全に動かなくなりました。
“影”が僕まであと数十cmと迫って来た時です。
廊下の奥の祖父の部屋から母が出てきました。その瞬間、僕の体の金縛りは溶け、目の前の“影”もどこかへ消えてしまいました。
その時は何ごとも無く終わったのですが、あの“影”が僕の心に深い恐怖を刻み付けたのは間違いありませんでした。


その日の夜のことです。僕は学生だった頃の母が使っていた部屋で眠りました。
廊下での得体の知れない体験のせいで僕は中々寝付けませんでした。
それでも午前の2時くらいになったら段々とまぶたが重くなってきて、ウトウトしてきました。
その時です。僕が寝ていた部屋の窓に強い風が吹き付けてガタガタと鳴り始めたのです。
途端に廊下での恐怖が全身にひしひしとのしかかって来ました。
案の定、窓がカラカラと開き、冷たく、重い風が部屋に流れ込んで来ました。僕の体はまたも金縛りになったのですが今回は瞬きすらできない程です。
しばらくしてからゆっくりとあの“影”が部屋の中に入って来ました。“影”はグルリと僕の周りを1周すると僕の寝ている布団の横、枕元の位置で止まり、もちろん顔も体も判別できないのですがじっと僕の顔を覗いている気がしてきました。
なんだか、全身の力を吸い取られる気分がしてきたと思ったら、体の髄に訴えてくる様な『ハァハァ』という息づかいみたいな音が聞こえてきました。
少しするとまた体の髄に響く音で『……違う』と“影”が言いました。
そう言うと“影”は僕の部屋から出ていきました。
僕は結局、怖くて全く寝れませんでしたが、朝の9時くらいになって部屋に入って来た父親に『じいちゃんが死んだ』と言われました。
僕が急いで祖父の部屋に行くと、あの“影”が来たときと同じ様な冷たく曇った様な空気を感じました。祖父の横では母親が泣いていました。
祖母に聞くと『しょうがないね。死神様が来てたから』と言いました。
僕が見たあの“影”が死神だったのでしょうか……。

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