▼旅行する 閻魔の下へと 最終便
……ほんの数時間前までは房総の先端で、切り裂くような冷たい潮風を感じていたのに……今はこんなところにいる………
さて、もう日付は変わって昨日の話になりますが、僕は日帰り学年旅行に行きましたなぜ日帰りなのか。それはマムとダッドが切れるから( -_-)
延々と辿り着かない電車に揺られること2時間、つまり120分、つまり7200秒。千葉県は千倉にやってきました到着して電車を降りるとびっくりw(°O°)w
あたり一面、まばゆいばかりの白銀沈黙雪景色この寒さに耐えかねてか、遥か硫黄島を望むこの広大な太平洋に足を運んだのはこの僕と“陸棲を始めた紅いデメキン”S君の二人だけだった(笑)そしたら置いてきぼり食らった(笑)味噌ラーメンを食った(泣)
あんなに昼ご飯が簡素で質素で粗末なものになるとは誰が予見できようこれだからテニサーはいつかしっぺ返しがあるんじゃないかと、びくびく怯えて生きるがよいって國道128號線の白き稲妻『大往生神閻魔崎』がおっしゃっていたよ(´ω`)
……と、このように地獄の呼び声が聞こえる僕ですが、この学年旅行の道中で、発泡スチロールをこすり合わせたような悲痛な叫びを耳にしたんですこの話は電車の中で、残念なS君にもしたけど、電車がトンネルを何度も通ったんだよちょうど窓を全開にしてたから、車輪が鋼鉄のレールに噛み付く轟音が共鳴に共鳴を重ねて車中にもおおきく響いておりました。うるさかったねー閉めろよ
まぁ、そんな騒がしいトンネルの中、俺はそこである悲しい声をした女性の『…………助けて……』を窓の外に聞いたあれは間違いなく幽霊の声だこんなトンネルに生きた人間がいる訳がない
何らかの理由でトンネルに死した女の幽霊の話題はその場では笑い話に転じたが、そのことが頭の片隅にこびりついてしまって離れなかったのだまあだから俺本来の華麗なるバレーボールを演じることができなかったんだけどっ
その女の人の『助けて』は何だったのかその疑問は不安に転じ、その不安は疑心暗鬼を招き、その疑心暗鬼は焦燥を余儀なくした。そしてその焦燥感から俺は一人で帰る道を選んだのだ
『俺がまたあのトンネルに行ってあげて、女の人の抱えるこの世の未練を解決せねば(`∀´#)今ここでバレーボールやってる場合じゃないんだ』
そうして、靴ひもも結ばずに全力で駆け出して、停留所を通過していくそのバスに飛び乗って、あぁ一瞬でも早く君の待つ場所(トンネル)へ
これが僕が学年旅行を早退した全貌です。決して窃チャリで謹慎してるのではない
そして遂に着いたよあのトンネル俺は窓を開けて耳を澄ました
『…………助けて………出られないの………このトンネルから………』
女の人の声が聞こえた囁くような、蚊の鳴くような、あまりにか細く寂しげな声に、俺は思わず唾を飲んだ(◎-◎;)ゴクリ
女の人は続けてこう囁いたのだった
『………出られないの………入ってきた……そのときはあったのに…………』
なんのことだろう。話は核心に近付いていく。
『…………入ってきた………ときはあったのに……気が付いたら……なくなってた………どうして………どうして…………』
俺は彼女を浄土へと導こうと、この世の未練から解き放とうと、彼女が彼女自身の疑問に答えを出せるように、一つ合いの手を打った。
『なくなったって、一体何がなんだい』
すると彼女はまた、さらに小さな声で返事を返した。
『……なくなってしまったのよ………どうして…………どうして…………』
『………どうして私の自転車を盗んだの………?』
……ほんの数時間前までは房総の先端で、切り裂くような冷たい潮風を感じていたのに……今はこんなところにいる………
そう。いま僕は彼女と一緒に地獄にいます。
(2009/09/13)