たんぽぽの充実

段出 梨緒(ダンデ リオ)さんの体重は50kgです。彼女と蒲 公英(カマ キミヒデ)さんは付き合っています。蒲 公英さんの体重は60kgです。
二人が初めて会ったのは渋谷のハチ公前です。蒲さんがそばの生け垣の中にたんぽぽを見付け、愛でていた時にたまたま段出さんが通り掛かったそうです。段出さんはとてもたんぽぽが好きなのです。
硬く冷たいアスファルトに、それでも力強く萌える芽。美しく波の形に縁取られた葉。何にも逆らわず、ただ天を目指し伸びゆく茎。灰色掛かった生気の無い雑草の中に、一際明るく咲く花。春には、白く輝きを放ち幻想的な夢を魅せる綿帽子たち。
そんな素敵なたんぽぽが段出さんは大好きなのです。渋谷という雑踏にたんぽぽを見出だしていた蒲さんに思わず声を掛けてしまっていました。
二人はちょうど同い年でした。二人とも一浪した大学1年生です。話は弾み、意気投合でした。二人ともたんぽぽが大好きでした。


蒲さんは大学で物理を専攻していました。そして蒲さんは段出さんとの鮮烈な出会いをこう表現しています。
『たんぽぽを見る二人は、他人ながらほんの1mmの距離に座っていました。その時の僕らはニュートンの万有引力の法則に逆らい、2kgを越えたパワーで惹き合っていましたね。』
間もなく二人は恋に落ち、お互いに愛し合いました。
この時二人は完全に心を共有していました。それはたんぽぽが雄しべと雌しべを艶やかに絡めるような、濡れた綿帽子のような、激しい愛の具現化でした。もはや『同化』とも言えるような愛でした。
その後段出さんはその『同化』に心を奪われ、暫くは上の空でした。しかしそれは決して悲しい憂鬱ではありません。満たされた者にだけ訪れる静かなる充実でした。
しかしその娘の目には憂鬱に写ったのでしょうか。麻路 萠菻(アサジ メリ)さんは段出さんを気にして、彼女に声を掛けたそうです。その時の対話は実に段出さんの充実を顕著に表しています。
『梨緒、最近ずっと上の空だよ…??
どうかしちゃったの??』
『同化しちゃったの。』
充実してますね。私も充実したいものです。

コメントを残す

Powered by WordPress.com. テーマ: Baskerville 2 by Anders Noren

ページ先頭へ ↑

%d人のブロガーが「いいね」をつけました。