『イジメ』とは
小林 乕(コバヤシ タケ)という小学生がいた。その娘はとても綺麗で、可憐で、清楚で、高嶺の花といった感じの少女だ。
そんな完璧なまでに美しい小学生の女の子は滅多にいない。しかし乕はクラスに馴染めていなかった。
周りの女の子達は乕のその美人さを妬み嫌っていて、そのせいで乕はいつも独りぼっちにされていた。
乕に近寄る者は一緒に嫌ってしまえ。そんな悲しい思想が蔓延っているのが小学生社会だ。
誰も人から嫌われたくない。だから乕に近付かない。悪い循環だが、それで一層乕は独りになり、誰も近付かないのだった。
そのうち乕は嫌われるに止まらなくなる。
イジメを受けだしたのだ。始めたのは女子のボス猿的存在の子だった。しかしそれが女の子全体、クラス全体へと広がってしまった。
そして嫌なあだ名まで付けられた。『ヤバ子』。
いつも独りぼっちじゃないあの子ぉ!?やだよねェ、ちょっと可愛いからって気取っちゃってさ?皆とは付き合い切れないわ、って。そう言いたいの?あたし、そぉゆうの嫌いなんだよねェ…?近寄らないでオーラ出してるみたいだけど、あんたになんか近寄るの、こっちから願い下げだってんの。ああ、それでも無視??ホント、この子ヤバいわぁ。
そんな言われのない事からでも、始まってしまえばイジメは止められない。乕は苦しめられ続けた。光は見えなかった。
乕に付けられたあだ名は中学に上がっても使われ続けた。ヤバ子とは単純なネーミングである。小学生のつけたあだ名であるからだが、それがかえって乕の心を傷付けた。
小林 乕という名前は有って無きが如し。呼ばれる事は全くないし、あってもヤバ子としか言われないからだ。
乕は中学でもイジメを受け続けた。しかしその形はいささか変わってきていた。
イジメ集団は普通の生徒ではなくなったのだ。いわゆる不良がイジメの中心人物となってきた。その中でも中学生男子の不良とはたちの悪いもので、表立った攻撃は無いが、影での扱いがそれは酷いのだ。
イジメは単に物理的攻撃ではなくなっていた。
それは羞恥心を攻撃する、性的なイジメだった。
中学生の男子とは性的な好奇心が旺盛である。それに加えて乕は美少女であったため、それは過激そのものだった。
放課後の体育倉庫。制服に身を包んだ美少女が、また今日も獣の餌食にされる。
拘束。
束縛。
監禁。
考えただけでも身の毛のよだつような攻撃をうけていた。
中でも不良の一番楽しんでやったイジメの手法にこんなものがあった。
制服を着せたまま、脚を縛って宙づりにするというものだ。逆さまになった乕の悲痛な叫びが倉庫にこだましても、外に漏れる事は決してなかった。
おうおう。良いザマじゃねぇかヤバ子ちゃんよぉ。パンツが丸見えだぜこれじゃあよぉ。ほら、もっとヤバいことしてやろうかぁ、ヤバ子ちゃ~ん!?
逆さまになっても乕はヤバ子と呼ばれるのだった。しかしそれは仕方の無いことなのかもしれない。なぜなら乕は
↓
こ
ば
や
し
や
ば
こ
↑
なのだから…(笑)。