可愛いあの娘の発言に過剰な意味を賦与したら

だんだんあのひとの番が近付いている。
俺の胸は高鳴りをかくせなくなる。
続いてヒラケンがこう言う。
『はい、じゃあこのmakeは何動詞ですか、西田くん?』
『わかんないです』
きた。
ついに回ってきた。
あの人の番がきた。
あの人の言葉を聞く体勢に入る。
もうヒラケンのつぎの言葉は耳に入らない。
『じゃあつぎ、もんたさんは?』
そこで、俺は耳をそばだてる
一字一句、声のトーンから息遣いまで、あの人の全てをこの鼓膜に感じ取る。
『使役動詞?』
キタ—-(゚∀゚)—ッ!!
使役動詞。
何て清楚な響き。
『し』から始まることであの人の甘い息がここまで届くような音。
そして、春風のようにその息は命をもたらし、荒野と化したタトゥイーンの星にあたり一面の花畑を作り出す。
そこでベン・ケノービにフォースを教わるルークの姿を見る
何故?
答はまだ見えないが、荒野のタトゥイーンに命をもたらすあの人の呼吸には、C-3POのような無機質ながら愛嬌を感じるだろう
そうか。
あの人の息の香はこの咲き誇る花たちからのものに同じなのか。これがあの人の魅力なのか。
続く『えき』のおとで、あの人は甘さを振り払うような勢いをみせた。
あの人の喉の奥の舌の動きを想像することを禁じえない。
また、あの唇の動きを想像することを禁じえない。
あの人の潤いを一身に集め、太陽のひかりを思う存分に照り返し、七色に輝く柔らかい唇は、まるでマンナンライフの蒟蒻畑さながら。
ひんやりとしたあの柔らかな形状が、プルンとふるえる場面がみえる。
これは果たして、キスなのか補食なのか
どちらにせよ明らかなのは、あの唇に吸い付いたが最期、喉に詰まらせて窒息死だろう
しかしあの人とのキスで窒息するのも悪くない
でもお年寄りや幼児は蒟蒻畑を食べる時は注意したほうがいい。もう販売停止だけど
あの人の唇もとい蒟蒻畑は販売停止にならないことを祈ろう
つぎに聞こえた『ど』は、一転して汚さを露呈する。
優雅からの堕落を示唆するその詩歌的センスを全身に打ち付けられる。
その痛み、悲しみ、そして絶望が影をあらわにし、俺の善を取り囲む。
まるであの人の暗黒面、ダークサイドを見ているようで、この悲しみはまさに、あの優しかったタトゥイーンの少年アナキンが、いつしか宇宙を恐怖で震撼させる史上最大の悪役ダースベイダーに成り果てる悲しみに酷似していた
しかし、そこに一点の光が差し込む。


『…うし』
“動詞”の最後の二文字。
そうか。
こんなドラマを用意してくれたのか。
あの絶望、救いのない惨禍に射した光は、言うまでもなく、この『し』だ
悲しみのどん底に一人佇み、途方にくれた俺にあの人はこんなドラマを用意してくれた。
絶望の淵で耳にした、この『し』は、初めて発した使役の『し』とはまた違った幸福を運び、俺をぶっ生き返した。
甘い息が俺の鼻腔をくすぐり、あらためてあの人の魅力を感じる。
命の息吹を運ぶあの人の息に再びルーク・スカイウォーカーの姿をみる
そう。あの史上最大の悪役に終止符を打つ者だ
しかし、それは決して暴力的でない。
彼はあのベイダー卿を殺すという形でなく、更正させるという形で、宇宙を守るのだ。
あの人の息遣い、声のニュアンスが全身を駆け巡る。
と同時に壮大な6部作のサーガに幕が降りる。
凄すぎる。
あのたった6字で宇宙のドラマを語るとは。またこの6字は6部作との関係性を感じずにはいられない。必然性を感じずにいられない。
また、言葉そのものを額縁どうりにうけても、この感銘はゆるがない。
『使役』
なんて攻撃的なニュアンス。まさにあの人の全てを体現した一語であり、またその強さには惚れざるをえない。
使いを以って尋ね使む
美貌を以って惚れさ使む
使役の美徳に酔いしれる。
心も身体もあの人の召し使いと化し、使役の悦びに浸りたいと願う。
そんな英語の授業だ。

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