独特な長体が魅力の書体「ツルコズ」が欲しい #カナモジ

最終更新日

味わい深いカナモジ書体、ツルコズ

「ツルコズ」という、独特で魅力的なフォントを知った。これは TypeBank の祖父江 慎氏が制作したフォントで、1930 年にカナモジカイの松坂 忠則氏が設計した書体「ツル 5 号」を復刻したもの。カナ書きに最適化した縦長のタイプフェイスがカッコいい。

ツルコズ (現在は販売休止?)

ツルコズは 2017 年まで TypeBank、Design Pocket、Font Garage で販売されていたようだけど、2022 年現在の入手は難しそう。TypeBank のブログには、「ツル 5 号」のカナに馴染むよう設計されたかなや記号、欧文などが載っていて面白い。個性的ながら親しみやすい絶妙な設計からは、実用の重視が垣間見れる。欲しいなあ。

[画像] TypeBank ツルコズ

僕がツルコズを知ったきっかけは、カナモジカイが公開している PDF。より直接のきっかけとなった YouTube 動画も、興味があれば見てみてね。

カナモジカイと、カナモジ書体

カナモジカイは漢字廃止を提唱する団体で、ウェブサイトも豆に更新されてる (この記事時点 2022/11/06 の最終更新は 2022/09/11)。カナモジカイが公開する PDF「カナモジ書体とは」は、日本語から漢字を除いてカナ書きするのに適した「カナモジ書体」を 2 つ紹介してる。1 つが上述のツルコズで、もう 1 つが「アラタ」というフォント。僕にツルコズを教えたのは、この PDF。

「アラタ」は株式会社モトヤが販売するフォント。詳しく言うと、アラタに同梱される仮名フォント「mk アラタ」が、カナモジカイの推す “カナモジ書体” のようだ。「アラタ」のかな/カナと、「mk アラタ」のかな/カナは違うのかな?詳細は分からない…😅

mk アラタ – 幅 80% (カナモジカイは長体を推してる)

余談ながら、この 2 書体の経歴は入り組んでて面白い。アラタはカナモジカイの機関誌『カナノヒカリ』で現在も使用実績がある (例 PDF) けれど、その起源は株式会社モトヤであってカナモジカイとは関係がない。他方、ツルコズはカナモジカイの会員が設計した「ツル 5 号」にその起源を持ちながら、現在は『カナノヒカリ』で用いられていないようだ。

根強い漢字廃止とカナ改良

カナモジカイの他に漢字廃止を提唱した団体の例に、カイレウニホンジカイ (= 改良日本字会) がある。カイレウニホンジカイが 1934 年に出版した書籍『国字問題の基礎智識』の画像が国会図書館 Digital Collection で公開されてる。画像だと読みづらいから、これを文字起こししてブログに掲載したこともあった。

漢字廃止の主張は一見過激に見えるけど、日本語の表記は大局的には整理の方向に向かってる。下に例を 2 つ挙げよう。発散した日本語表記の整理に、昭和時代はかなり前向きだったのだ。カナモジカイの Twitter も、そのことに言及してる (下掲)。

  • 1900 年、多様化したひらがなを「正体仮名」と「変体仮名 (Wikipedia)」に分け、変体仮名を学校教育から除外した
  • 1946 年、段階的な漢字廃止を目指し、当面の使用を許容する「当用漢字 (Wikipedia)」以外の漢字の使用を制限した
ひとたび合理化した物事は、再び不合理化したりしない…?

しかし最近は、当時ほど表記合理化への熱は高くないように思う。「当用漢字」を 1981 年に「常用漢字」と改めたのは、漢字廃止論の下火を受けて当初の理念を薄めるためでしょう (推測)。文字が「書くもの」から「打ち込むもの」に変わったことも影響してるかもね。カナも漢字も、打ち込む手間は大きく変わらないから。

カナ書きは普及するのかな?

表記合理化の手段の一つである「カナ書き」、その普及を阻む大きな理由の一つは、日本語の同音異義語の多さでしょう。とは言え、元を辿れば同音異義語が多い理由は、漢語を日本語に取り込んだからあって、漢字を廃止すればこの問題は一挙に解決するかもしれない。カナモジカイのサイトのあるページに、面白いことが書かれてたので引用する。

いずれも、日本語での音読みでは「コウ (コー)」と発音し、耳で聞いて区別できませんが、中国語では、これらはすべて異なるオトであって、耳で聞いて区別できるのです。ローマ字で書けば (現代の共通語〈普通話〉の発音では) このようになります。

漢字発音漢字発音漢字発音
kǒuhòujiào
gōngkǒnggōng
qiǎohénggōng
guǎnghuāngxíng
hónghòugōng
jiāogāogèng
guānggēngxiào
hǎokānghóng
kǎoxìnghóng
kēngjiǎjiāo
xiàoxiàngxiāng
jiānghángxiào
kànggǎnggòng
kěnkuàngjiàng
漢字と発音

これは、英語の「bath」も「bus」も「bass」も日本式に発音するとみな「バス」になってしまうのと同じことですが、中国語と日本語の関係になると、これが極端になってしまうのです。

同音異義語の区別に不可欠な漢字の廃止は不可能か – (可読性のため列挙を表に改変)

日本語より母音/子音の多い言語 (例えば英語や中国語) から言葉を借りると、音が収斂して同音異義語になりがちとの指摘は鋭いねえ。上表の漢字の列挙はカナモジカイからの引用で、対応する pinyin は僕が独自に調べたもの。pinyin を調べると、下の 14 個の漢字は中国語でも区別不能っぽいけど、僕の調査が間違ってるかな?

漢字読み
工、公、功、攻gōng
弘、洪、紅hóng
厚、候hòu
交、郊jiāo
孝、効、校xiào
中国語でも発音が同じ漢字?

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