【文字起こし】改良日本字マナ

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1934年の出版を,今ここに電子化!

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国字問題の基礎智識

これは何?

これは1934年(昭和9年)に「改良日本字マナ活字試作後援会」によって著された『国字問題の基礎智識』という本の最初の2ページを書き起こしたもの.国立国会図書館によって電子化されて保存・公開されてるけど,画像データだから検索性が悪い.こんなに面白い内容なのに多くの人の目に触れないのは勿体無い!という訳で僕が勝手に文字起こししたものです.

旧仮名遣い,旧漢字,その他僕が読みづらいと判断した箇所について,最小限の改変を加えたものと,(入力できる限り忠実に)改変しないで書き起こしたものと2つ掲載します.原典 (リンクは国立国会図書館ウェブサイト.画像データなので読みづらいですよ…) のほうが偉いので,慎重を期すならそっちも読んでね.

まずは僕による現代仮名遣い直しの文章を

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国字問題の基礎智識

国字改良への願い 改良日本字会

国字改良の急務

漢字は字数筆数とも非常に多く,かつ我が国語に不向きであったからその読み方書き方が今なおすこぶる混雑している.

それゆえに学習・筆記・判読・印刷などに使う国民の努力・時間・費用などは年々何億円かの損になる.まずこれを中学の英語くらいに専門化して,別に簡便な国字を定めなければ,本当の学問や国力は進まない.すでに漢字を習った者がそれを最上の文字と思うのは習慣の中毒です.本国中国ですら30-40年前から横書きのカナを作り,今や新聞雑誌にまで盛んに専用し,早くも漢字廃止の実行に踏み込んでいるではないか.

各人良心の責任

常に適当な国字の有無を考えず,あると知っても問題解決を傍観するのは,我々の怠惰が大負債を子孫に転嫁するものである.

かかる利己的国民の続く限り,漢字は永久に子孫を虐げる.ゆえに国字問題では中立・無関心・骨惜しみはいずれも罪悪だ.反対にこの運動が全く自分のためでないと知りつつ,率先協力することは誠に尊い愛と良心の発露である.

カナ は支那文字の不便を悟って,我らの祖先が国語に適するように発明した,世界でも比較的良い文字です.改良すればなお便利になります.

ローマ字 にも長所は多いが,国語を綴ると語形が長くなり,かつ色々の理由で読みにくい.カナ改良を試みない一足飛びのローマ字採用は,あるいは万年の悔いとなるであろう.

語形と読み書きの速さ

柳や桜の字は偏と旁に分かれるが,慣れれば各一固形と感じる.英語の willow (柳) ,cherry (桜) などもローマ字綴りではあるが各一固形に覚えられる.かく数個の文字が組み立てる単語の形を仮に「語形」と言う.長い文を一字一字読まずに,語形の飛読ができれば,読書は楽で早く,文化を促進する.漢字の字形は同時に語形だが,躑躅 (つつじ) ,名古屋,西郷など一語一語形にならぬものも多い.旧カナ,日本語のローマ字綴もこの語形組み立て力が不十分だ.幸いカタカナなど改良してヤナギ,ツツジなどの形が良くまとまれば,日本語のためにはカナ漢字ローマ字の長所を合わせた最良のものとなろう.

改良の原理

カナ改良は単なる図案家的工夫では駄目です.各国の文字の変遷には微妙な原理が潜み,カナやローマ字すら今もおもむろに進化している.この原理は従来ほとんど研究者がなかったが,人類の文字に対する生理的・経済的・美学的・心理的・社会的の諸要求を細かに反映している.これを一般的に研究して,しかるのちある一国の文字の改良に適用しなければ誤りである.

改良日本字マナ はカタカナ46,ひらがな2 (し,て) の原形を極力保存し,極力合理的に改良し,かつローマ字洋数字との混合を避けつつ,語形の記憶や筆記に便し,また印刷 (楷,離し書 (行),続け書 (草),速記など4書体) の連絡を厳にしたのです.

マナ50音表はすぐ読めるが,読書は語形を要素とするから,他の文字との語形構成力の比較は,しばらく記憶の練習と議者の推定に待つ.

同憂の士よ

諸君のわずかな骨折りで中古カナ発明以来の,ことに当面の大問題―日本文化の癌が解決されるのです.まず

【第一.左横書き実行】文字のいかんを問わず文書・看板・筆記・印刷一切に励行.これ解決の基礎.

【第二.願わくばマナ48字の記憶】簡単.

【第三.マナ印刷物への親しみとその宣伝】

【第四.マナ筆記実行】使ってみれば早くてかつ簡便.単語別分け書きで語形を作るように.

〔楷書〕は印刷認視の形.高低出入面倒だが郵便宛名および不案内の人に現に通用す.特に〔暫定俗体〕がある文字は当分それによる.

〔行書草書〕新案.ただし楷書が分かればすぐに覚える

⦿自他不慣れの文字は旧カタカナ代用も可.「灸」「州」「京」「少」「帖」「評」「妙」などは「キ」「シ」「ケ」「セ」「テ」「ヘ」「メ」に「ウ」を付く.

序にかえて

拝啓.本書は東京市の初等教育界および郵便局方面に読んでいただく目的で早急に編集した マナ文庫 数巻の一部であります.問題の一半を別巻に譲りかつ説くところも甚だ簡略ですが,国家国字のためと思し召して小閑に

(1) 一通りご高覧を賜らば光栄です.

(2) さらに願わくば何らかのご所感を下名へご寄稿くだされたく,忌憚なきご意見は一層この事業を啓発することでありましょう.

(3) 特に平生ご抱懐の国字論などご投稿くださらば,本書の追加,別冊または計画中の機関雑誌の光彩と相成ることと存じます.

マナ はまだ本格の宣伝に着手しませんが,過去2ヶ年間ほんの同志だけが実務上の通信の宛名や文章に用い,約4000通が所用を弁じました.1枚のはがきが30余人の手に回覧または転写されたごとき例もありますが,通算2万くらいの同胞の目に触れているでしょう.中にはすでに読み書きに慣れて,便宜がっている常用者もあります.これらの状況は改めて実例や経験談によって公表いたします.

とにかく,我が国字の簡化改良のためひとえにご声援をお願い申し上げます.追って,マナ習字帳は本年初夏までには完成の予定です.

次に,できるだけ改変していない原典の文字起こし

区切りのために画像を置きます…

コクジ カイレウ ヘノ 子ガヒ

カイレウ ニホンジ カイ

國字改良の急務

漢字は字數筆數共非常に多く,且我國語に不向であつたから,其の讀方書方が今尚頗混雑してゐる.

爲に學習・筆記・判讀・印刷などに使ふ國民の勞力・時間・費用等は年々何億圓かの損になる.先づ之を中學の英語位に專門化して別に簡便な國字を定めなければ,本當の學問や國力は進まない.旣に漢字を習つた者がそれを最上のモジと思ふのは習慣の中毒です.本國シナですら3-40年前から横書のカナを作り,今や新聞雜誌に迄盛に專用し,早くも漢字廢止の實行に踏込んで居るではないか.

各人良心の責任

他に適當な國字の有無を考へず,有ると知つても問題解決を傍觀するのは,我々の怠惰が大負債を子孫に轉嫁するものである.

斯る利己的國民の續く限り,漢字は永久に子孫を虐げる.故に國字問題では中立・無關心・骨惜は何れも罪惡だ.反對に此運動が全く自分の爲でないと知りつつ,率先協力することは,誠に尊い愛と良心の發露である.

カナ ハ シナモジ ノ フベン ヲ サトツテ, ワレラノ ソセン ガ コクゴ ニ テキスル ヤウニ ハツメイシタ, セカイ デモ ヒカクテキ ヨイ モジ デス. カイレウ スレバ ナホ ベンリ ニ ナリマス.

ローマジ にも長所は多いが,國語を綴ると語形が長くなり,且つ色々の理由で讀み惡い.カナ改良を試みない一足飛びのローマジ採用は,或は萬年の悔となるであらう.

語形と讀書の速さ

柳や櫻の字はヘンとツクリに分れるが,慣れれば各一固形と感じる.英語の willow (柳) cherry (櫻) 等もローマ綴ではあるが各一固形に覺えられる.斯く數箇のモジが組立てる單語の形を假に語形と云ふ.長い文を一字々々讀まずに,語形の飛讀が出來れば,讀書は樂で早く,文化を促進する.漢字の字形は同時に語形だが,躑躅 (ツツジ),名古屋,西郷など一語一語形にならぬのも多い.舊カナ,日本語のローマ字綴も此語形組立力が不十分だ.幸片カナなど改良してヤナギ,ツツジ等の形が善く纏まれば,日本語の爲にはカナ漢字ローマジの長所を併せた最良のものとならう.

改良の原理

カナ改良は單なる圖案家的工夫では駄目です.各國のモジの變遷には微妙な原理が潜み,カナやローマジすら今も徐に進化してゐる.此原理は從來殆研究者が無かつたが,人類のモジに對する生理的經濟的美學的心理的社會的の諸要求を細に反映してゐる.之を一般的に研究して,然る後或一國のモジの改良に適用しなければ誤である.

改良日本字マナ は片カナ46,平カナ2(し,て)の原形を極力保存し,極力合理的に改良し,且ローマジ洋數字との混合を避けつつ,語形の記憶や筆記に便し,又印刷(楷,離し書(行),續け書(草),速記等四書體の連絡を嚴にしたのです.
マナ50音表は直ぐ讀めるが,讀書は語形を要素とするから,他のモジとの語形構成力の比較は,暫記憶の練習と議者の推定に待つ.

同憂の士よ

諸君の僅な骨折で中古カナ發明以來の,殊に當面の大問題―日本文化の癌が解決されるのです.先づ

【第一.左横書實行】モジの如何を問はず文書看板筆記印刷一切に勵行.是解決の基礎.

【第二.願はくばマナ48字の記憶】簡單.

【第三.マナ印刷物への親みと其宣傳】

【第四.マナ筆記實行】使つて見れば早くて且簡便.單語別分け書で語形を作る様に.

〔楷書〕は印刷認視の形.高低出入面倒だが郵便宛名及び不案内の人に現に通用す.特に〔暫定俗體〕があるモジは當分それに由る.

〔行書草書〕新案.但楷書が解れば直ぐ覚える

⦿自他不慣のモジは舊片カナ代用も可.灸州京少帖評妙等はキシケセテヘメにウを附く.

序にかへて

拜啓.本書は東京市の初等敎育界及郵便局方面に讀んで頂く目的で,早急に編輯した マナ文庫 數卷の一部であります.問題の一半を別卷に譲り且つ説く處も甚簡略ですが,國家國字の爲と思召して小閑に

(1) 一通り御高覽を賜はらば光榮です.更に願はくば

(2) 何等かの御所感を下名へ御寄稿下されたく,忌憚なき御意見は一層此の事業を啓發することでありませう.

(3) 特に平生御抱懐の國字論等御投稿下さらば,本書の追加,別冊又は計劃中の機關雜誌の光彩と相成ることゝ存じます.

マナ は未だ本格の宣傳に着手しませんが,過去2ヶ年間ホンノ同士だけが實務上の通信の宛名や文章に用ひ,約4000通が所用を辯じました.1枚のハガキが30餘人の手に廻覽又は轉寫された如き例もありますが,通算2萬位の同胞の目に觸れて居るでせう.中には旣に讀み書きになれて,便宜がつてゐる常用者もあります.此等の狀況は改めて實例や經験談に由つて公表致します.

兎に角,我が國字の簡化改良の爲め偏に御聲援を御願ひ申上げます.追て, マナ 習字帖は本年初夏までには完成の豫定です.

東京市本鄕區湯島尋常小學校内 改良日本字マナ活字試作後援會

東京市牛込區若宮町35 カイレウ ニホンジ カイ

同所 サカモト エイキチ

敬白

マナ
の活字未完成に付き不鮮明無規律ながら亞鉛凸版として印刷用斜型楷書體及其中の郵便宛名用等の變體,連續草書體,並に敎育勅語の楷草兩綴を例示す.

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