作文ベタな大学生は小論文で隙あらば自分語り

低品質な文章を大量に読み込んで,最も呆れた点について書いたよ.
隙あらば自分語り😇 その1
課題について調査して纏めたレポートの中に,筆者個人に関する情報は必要ない.そのレポートを読むと主題に関する情報を得られるのが望ましいのであって,レポートの筆者についての情報は本論と関係がない.「主題について書く動機」とか「主題と自身との関係性」とか,不必要なことに言及すると議論の見通しが悪くなる.
文章の下手な人は主題と自分の境界線が曖昧なようで,隙あらば自分語りを始めてしまう.例えば岩石の一種トラバーチンについて書いた文章で,自分のパリ旅行の思い出を語ってしまう.以下は実際に僕が大学生のときに書いたもの.これへの対策は簡単で,ただ削除すればよい.
古代ローマではトラバーチンは乾いて硬くなったトラバーチンを建材として頻繁に使用していた。またパリのサクレ・クール寺院にも使われているとのことで驚いた。私は去年の夏休みにそこを訪れたからだ。
コロッセオに!国会議事堂に!活躍幅広い岩石 トラバーチン – 回れ右の内輪差
隙あらば自分語り😇 その2
上記はかなり単純な自分語りだけど,もっと見分けにくい自分語りの混入も起きうる.例えば「A が B した」で済む内容を「私は A が B したと分かった」のように書いてしまうケース.下の文は「内閣府、農林水産省、経済産業省は独自に試算を出している」で十分なのに,不必要に自分をねじ込んで書いてる.
少し調べてみたところ、内閣府、農林水産省、経済産業省が独自に試算を出していることがわかった。
縦割り行政を脱しない各省庁の TPP 効果試算 – 回れ右の内輪差
これへの対策は「『私』が主語の文章を避ける」というもの.日本語は英語ほど「主語」を明確に意識しない言語だから,例えば上記の「A が B したと分かった」の文で「私」は明示的には書かれてないね.でも考えれば主語が「私」なのは明らかで,これを「A は B した」と書けば文章を改善できるとすぐに気づけると思う.
原因はパラグラフライティングを知らないこと
パラグラフライティングを知らなければ,いい小論文を書けるはずがない.パラグラフライティングとは,文章全体の主張を,各節 (セクションとも) が分担して論証する論文の構成手法のこと.詳しく知りたい人には,パラグラフライティングについて纏めた名古屋大学のページが簡潔で分かりやすいけど,もし物足りなければ他のサイトを参考にしてもいいかも.ここでは詳説しません.
これへの対策は「知ってください」「勉強して下さい」としか言えない.話題文 (トピックセンテンス) を掻い摘んで読むと要約になるとか,何をどこで言及すればよいか自動的に決まるとか,メリットは読み手 / 書き手の両方に及ぶ.パラグラフライティングの考え方を身につければ「自分語りしてしまう」も回避できるので,これこそ作文ベタを改善する銀の弾丸だと思う.
パラグラフライティングの考え方は,推敲でも効力を発揮すると思う.「論文は,全部書き終わってやっと全工程の3分の1が済んだと考えよ」と東大の松尾先生は書いてる.書くのにかかった倍の時間を使って,しっかりと見直すといいね.
乱文要約を通して「良い文章」に思いを馳せた
この記事を書いた動機は、10 年以上前に書いた文章に頻出する「隙あらば自分語り」にうんざりしたこと…😮💨古い PC のデータ整理で,34本もの大学の授業の課題レポートが発掘された.記録用にブログ掲載するついでに,10年以上前の僕が何をどう書いたか (覚えてないので) 読んでみた.中には悪くないのもあったけど,ほとんどが論旨不明な雑文ばかり.
乱文の要旨を見抜くのはかなり大変だったけど,本文の要旨を端的に括り出してタイトルに設定した.記事として公開するからには,乱文をそのまま掲載するのではなく,僕以外の読者にとっても有益かつ有意味にしたかったのでね.これは読解力の訓練になったし,作文力の訓練も兼ねたと思う.
分野 | 要旨 (題名) | 年 + URL |
---|---|---|
社会学 | 社会が規定する行動原理: 東日本大震災の事例 | 2011 |
社会学 | キリスト教の興りから今日のイスラム教まで | 2010 |
社会学 | 宗教が規定する思想と行動 | 2011 |
社会学 | 暗黙の日本教が日本人の霊的救い | 2012 |
社会学 | 成長期➔不況期➔国際化期と、価値観の個人責任は苛烈に | 2010 |
社会学 | 日本の安全保障戦略: 軍備の実現性と有効性の検討 | 2012 |
社会学 | 縦割り行政を脱しない各省庁の TPP 効果試算 | 2009 |
科学と社会 | 環境負荷の解決策を win-win 型へ転換せよ | 2013 |
科学と社会 | 古紙率偽装の倫理破綻に学ぶ、課題の透明化による不正予防 | 2010 |
科学と社会 | 水俣病の論考も重要だが被害者救済こそ最優先 | 2010 |
科学と社会 | 生物/化学兵器の歴史と種類: 神経ガス、マスタード剤、炭疽菌 | 2009 |
科学と社会 | 科学者4人の足跡に見る電磁気学 成立史 | 2012 |
科学と社会 | コロッセオに!国会議事堂に!活躍幅広い岩石 トラバーチン | 2011 |
科学と社会 | 科学技術者の倫理が消費者と企業を守る | 2010 |
都市工学 | 公共空間は,より明確な機能が求められる存在へ | 2011 |
都市工学 | 美と統制の不本意な関係: 逸脱の試みと,その回帰 | 2012 |
都市工学 | 希薄化した旧景の靄を抜け、新しい日本的景観の再定義へ | 2012 |
都市工学 | 民間主導の都市設計は利用者生活を囲い込む | 2011 |
都市工学 (建築) | 建築と自然が調和する方法は,自然の性質により異なる | 2012 |
心理学 | 多様で複雑な認知不全は,高度な脳機能と表裏一体 | 2011 |
心理学 | 鮮明なフラッシュバルブ記憶が改変されてしまうメカニズム | 2010 |
心理学 | 文法知識と語彙知識が外国語学習を成功へ導く | 2010 |
心理学 | 日常をちょっと快適に!あくびと鼻詰まりのツボ | 2009 |
情報工学 | 理解と鑑賞を差し置いて科学は文学を要約した | 2012 |
情報工学 | 優れた情報システムは人間の認知特性に基づく | 2012 |
情報工学 (ゲーム理論) | 仲間か?スパイか?疑心暗鬼の鬼ヶ島 | 2010 |
芸術 / 文学 | 時代の苦悩を投影した芥川の名改作『袈裟と盛遠』 | 2013 |
芸術 / 文学 | 自由の女神が民衆を導いたのは何時何分? | 2011 |
芸術 / 文学 | 2010年2月8日 劇場 [春] ライオンキングでハプニング! | 2010 |
大学受験 | 「熱中」と「楽しむ」の受験: 第一志望合格の大学受験体験記 | 2009 |
大学受験 | 第一志望合格の僕が採った9月以降の受験戦略 | 2009 |
大学受験 | 英数国の平均偏差値39から国立大に受かる3つの指針 | 2009 |
生物 | 細胞の構造と機能: 小器官の種類と分類 | 2009 |
英語 | TOEIC 525 点の英作文能力はこの程度 (かなしい😢) | 2009 |
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