現代社会分析レポート「日本の安全保障戦略: 軍備の実現性と有効性の検討」

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これは,おそらく 2012年,大学3年生の後期に僕が授業の課題レポートに書いた文章.読み応えのある内容である反面,紛糾しがちな議題でもある.配慮を欠いた迂闊な表現が用いられている可能性があることを,あらかじめお詫びします.懸念のある箇所を部分的に修正し,残りは当時の書いたままを掲載します.

改めて読み返した感想を箇条書きで簡潔に述べると,

  1. 結論は「経済成長が安全保障の最善策」というもので,穏当な結論に安心しました
    1. …というのも,部分部分で現在の僕は同意しかねることも言っているので…
  2. よく調べられていると感じたけど,参考文献に全く覚えがない.読んだっけ?
  3. 珍しく見出しは当時の版にも振られてた.この転載にも書き足しをしてません
  4. 2012年当時は,北朝鮮が検討課題だったのね.2022年現在,挙げるなら中国だろうね

1. はじめに – 「冷戦」に見る、軍事の基礎のまとめ

軍事力による国際政治の力学を見ていく上での、基礎知識を得るために、まず冷戦を振り返り、軍事力が国際政治に与える影響を考える。それに関し、「冷戦史の再検討―変容する秩序と冷戦の終焉」(2010) という書籍を参考にした。

冷戦とは1945年の第二次世界大戦の終結から始まり、1989年のマルタ島での米ソの首脳会議によって終結した、戦火を伴わない国際対立のことである。この対立の根本は1945年のヤルタ会談で、ソ連軍と連合国軍の占領地の分配を決めたことに由来する。そしてソ連とアメリカという超大国による国際的対立が生じた。

始めのうちは政治的対立に収まっていた問題であったが、次第に軍事的な対立も生じてきた。ここから米ソの軍拡競争が始まるのである。まず始めにアメリカは西ドイツや西欧の軍備を引き受けるとしてNATOを構成し、目前の平和を求めた。しかし線引きされた反対側、東欧ではソ連による軍備統合がなされるワルシャワ条約機構が結ばれた。ソ連と協調する側は社会主義を、アメリカと協調する側は自由主義を思想の基本としていた。

軍備を拡大する最大の目的は、軍事面で対立国より優位に立つことである。こうすることで、意見に従わないものを制裁する力を持つため、相手に自国の意見を尊重させる強制力になりうる。そして中世や近世では、その軍事力はしばしば行使され、戦争へと向かっていった。しかし、冷戦期には米ソ共に核兵器を持ち、すぐにそれを使うことは躊躇された。そのため実際の戦火は上がらなかった。

軍拡競争の中で、大陸間弾道ミサイルの開発が行われていた。しかし大陸間弾道ミサイルの脅威を敵国に知らしめるための宇宙開発がきわめて盛んに行われた。宇宙にシャトルを送り込む科学技術力があれば、敵国に核ミサイルを撃ち込む技術も備わっていると考えられる。米ソは敵国に軍事力を見せ付ける目的で、宇宙開発に注力した。

軍事力は国際的な発言力を担保することに関して、非常に優れた効果を発揮する。軍備が小さく、経済力も小さい小国の発言には、耳を傾けないことのデメリットは無いが、軍備が大きかったり、経済力のある大国の発言を無視することはできない。なぜなら武力行使されては困るし、経済的な損害を被るのも困るからである。このことから、経済力と同等に、軍事力は大切な要因たりうる。

2. 敗戦後の日本 – 日米安保条約から見る東アジア

日米安保条約と北朝鮮に関する知識は「日米同盟vs.中国・北朝鮮」(2010) を参考図書とした。

日本が軍隊を持たないことは、第二次世界大戦での敗戦、そしてポツダム宣言の受諾によって運命付けられた。そして日本は軍隊を持たない代わりに、アメリカの軍隊が本国領土内に駐屯することを認め、戦時には日本軍に代わり戦闘行為を行うことを約束している。

常識的に考えて、自国の安全保障を他国の軍隊に委託している状況は極めて危険であると言えるであろう。なぜならわが国を守るため、という強い動機を持って戦闘行為に臨むのとは明らかにモチベーションが違うし、またその約束の確実性すらも疑いうるからである。しかし日本はそのような条約を飲み、戦力を放棄し、アメリカからの庇護に完全に依存しているのが現状だ。

それでもよい理由はいくつか考えられる。例えば、アメリカは反アメリカ的思想の国家の存在を認めない。そしてその存在が明らかになったとき、アメリカは戦争を仕掛ける。例えば北朝鮮や台湾は、戦後の世界情勢において親アメリカでなかったために、アメリカ軍が日本に駐屯する意味は絶大であった。そして日本に攻撃を行う国はそのような反アメリカ的な国家が多いため(それは日本が新米であることによる)、「日本の安全保障」と「アメリカの自由主義の世界展開」は近い目標(言い換えると仮想敵国)を共有していたことである。

またそもそもアメリカという大国に守られた国に、戦争を仕掛けることはないであろう、といった抑止力にもなるからである。第二次世界大戦の戦勝国アメリカは益々国力を増し、軍備を拡張し、軍事大国へとのし上がっていった。そのような大国の庇護の下にある日本を攻撃することは考えにくい。実際、アメリカが日本を防衛するべく軍隊を動員しての武力行使をしたことは、第二次世界大戦が終結してからこの70年弱、一度もない。軍隊を待たず、国家の安全保障を丸投げした国に誰も攻め入れてないのだ。かなり強い抑止力となっているのは言うまでもない。

日本国内でも、長く苦しい戦争に疲弊し、すでに戦争を拒む動きが強かったのではないかと思う。アメリカという大国が守ってくれるなら甘んじようではないか、という安易な考えを持つ者もいたと推測する。現に、私はこのことについて調べるまで何も知らず、この考えに近いものを感じていたからだ。

日米安保条約を結んだことで、東アジアの情勢はどうなっただろうか。中国はもともと資本主義的でなく、社会主義的、共産主義的な経済の仕組みを採用していた。それはかつての毛沢東の失敗に省みることから始まっているのであろう。しかし現在は中国は日本の最大の貿易相手国となり(輸出、輸入ともに最大額を占める)、アメリカの最大の輸入相手国でもあり、また輸出相手国としても中国はカナダ、メキシコに次ぐ第三位だ(アメリカはNAFTAを結ぶカナダ、メキシコからの輸入よりも、中国からの輸入のほうが多い。これは驚くべきことである)。

資本主義的な思想が拡大し、世界経済において(特に日米にとって)無視できない存在になっているのは明らかである。中国は再び共産主義へ回帰するのか、それともアメリカ寄りの自由主義経済を推し進めるのか、国家戦略の岐路に立たされている。そのため日米安保条約は中国に圧力をかけ、新米への誘導力として有効に働いていることは事実であろう。

また北朝鮮ではどうだろうか。北朝鮮はソ連の支配の面影を色濃く残し、いまだに共産主義的な態度で国際政治を行っている。軍備を拡充し、対米、対日交渉において発言力を獲得してるのは明らかである。

例えば、日本を狙うノドンを200基保有し、日本への攻撃力を明らかにすることで、「日本の反動勢力は、日本列島がわが革命的武装力の容赦ない打撃圏(攻撃圏)内にあるということをひとときも忘れてはならない」と牽制を可能にしている。また日本への攻撃を示唆することで介入してくるアメリカに対しても、遠距離弾道ミサイルのテポドンも500基保有しているといわれる。これによってアメリカに対する抑止力をも獲得している。

つまり北朝鮮は日米安保条約への対策(すなわち国家戦略)に関して抜群の分析力を発揮し、一応その実現までをやり遂げていることが分かる。対立国の状況を分析することが非常に重要であることは言うまでもないが、それを必要十分完成させた北朝鮮の国家戦略はかなり成功しているといえる。

3. 核武装について – 北朝鮮や日本の核武装について

日本の核武装の困難を叙述する上での考慮案件について「『核武装』が日本を救う」(2011) を参考図書とした。

さて、軍事と外交の密接な関係を見てきたので、ここから日本や北朝鮮の核武装について考えてみる。具体的には、北朝鮮の核武装の意味(少し前項で言及している)、日本の核武装可能性について考える。

まずは北朝鮮の核武装について。北朝鮮は弾道ミサイルを1,000基ほど保有しているといわれているそうだ。しかしそのミサイルすべてに核弾頭が装備されているわけではもちろんなくて、核爆弾の数は3~6程度のオーダーである。この数はアメリカの保有する核爆弾9,700発と比較して、とてつもなく少ない。

しかし対米戦を想定しての戦力としてではなく、東アジアの中で先進国といわれる日本をその射程に入れていることによる、その意味(核戦力の意味)は大きい。日本を射程に入れていることで裏づけされた強気の主張で外交を進めることができているからである。

次に日本の核武装を考える。先に結論を述べれば、日本の核武装はかなり現実的でない、ということだ。前項でも述べたとおり、日本は自国の安全保障をアメリカに全面委任しており、戦力を持たない。ゆえに日本の核武装の困難の原因は、憲法上の問題でもあるし、国民の多くが戦争を忌避したいと単純に考えることによる「戦力を持つという国家戦略」への支持、理解の少なさなどが考えられる。また「日本は世界で唯一の被爆国であるから、反核の精神を道徳としている」ということも原因にあげられるだろう。

しかしそう単純でもない。日本国民が総意で核武装を肯定しても、アメリカがそれを認めるかは別の問題なのだ。日本が自国の安全保障を自らの戦力によって実行できるようになったとして、そのとき日米安保条約は日本にとって枷となるのみである。なぜなら自国を防衛するだけの十分な軍事力を持つならば、アメリカによる庇護は不必要であり、アメリカ軍が駐留する意味がなくなるからである。すると日本は日米安保条約の必要性に疑問を抱き、破棄する可能性を考慮するのは当然だ。

しかし日米安保条約はアメリカにとっても利益のある条約であり、一方的な破棄は認めがたい。するとアメリカは日本が条約破棄する動機ともなりうる「日本核武装化」を否定する立場を表明するのは必然であろう。すなわち日本の核武装は実現可能性が、さまざまな理由から極めて低い。

4. 未来への展望 – 日本のとるべき国家戦略

さて、北朝鮮との対立を深めている現在の日本は、どのような戦略で外交交渉力を確保していくべきかについて考える。ここからは私の知識のみによる考察であるから(前項までの事実関係は出典から確認済み)、間違いを含むかもしれないが、独自研究として見てほしい。

軍事力による外交発言力の担保は非常に難しい。またそれは日本が被爆国である、という事実も重く影響を及ぼしている。しかし日本の対北朝鮮戦略(戦略とは軍隊の武力の運用方針を指して言うのではなく、strategy、目標達成のための包括的な手段、という意味)では、やはり軍備の拡張は多かれ少なかれ必要であるように思う。

日本はアメリカの庇護の下にいるという状態を「安定」と考えているような気がする。これは大きな勘違いだ。アメリカが北朝鮮からの攻撃、侵略戦争やテロ(むしろ後者の可能性のほうが大きい)の可能性を注視して、必ず日本の防衛を実行するとは限らない。アメリカには、日本がテロ攻撃されることによるデメリットがないのだから、それは防衛しない理由となる。

他にも防衛行動をしない理由として考えうるものがある。アメリカがもし、北朝鮮の日本へのテロ攻撃を確認し、防衛行動を行えば、北朝鮮は敵国をアメリカ、日本と二つに増やすことになるだろう。その証拠に、北朝鮮は太平洋を跨ぐことのできるミサイルを500基保有しているのだ。アメリカへの攻撃が北朝鮮にとって賢い判断かどうかは考えないとしても(そもそもテロ攻撃がどうかと思うし)、この場合、アメリカは日本人の安全保障ためにわざわざ貴重な国民と国土を犠牲にすることになる。これはアメリカにとって国益となるのか。恐らくならない。これもアメリカによる防衛を期待できない理由になるだろう。

そこでより直接的な抑止力は必要だ。核兵器を持つ必要はない。北朝鮮は貧しく、中枢を集中的に対策すればすぐに戦力は失われるであろう。貧しい国民が飢えに苦しむ平壌以外の国土は、万が一の戦時にも攻撃の必要性はないのだ。ごく少数の焼夷弾のような兵器を持ち、その存在を北朝鮮に知らしめるだけでいいはずだ。

しかし、国民の総意で自衛隊が軍隊になることに同意するとは思えない。今までの私がそうであったように、国際政治と軍事力がいかに関わり合い、影響しあっているのかを学んできていないからだ。現実のすべてを教えることが義務教育の務めだとは言わないが、これほどまでに重要なことの、ほんの一端すらも語られない教育というのもいけないのではと思う。自分で知りにいかないとまったく知ることができない。そのようなことを調べるきっかけとして、非常にこの読書やレポートは有意義だった。

国民の総意が得られないとすると、日本がアメリカにとって守るべき価値のある国家になるしかないのではないかと思う。北朝鮮は日本攻撃を考えるなら、自衛隊基地や在日アメリカ軍基地、また東京を標的にすることは用意に推測できる。在日アメリカ軍基地を守るのはアメリカにとって当然であるが、東京やその他「日本すべて」がアメリカの国益に繋がるように発展することが必要かもしれない。

それは属国に成り下がることでも達成されるであろう。しかしより建設的な案は、日本が国債などの負債を返し、国家財政的に安定を獲得し、そして効果的な経済政策を行い国内、国外の産業を活性化させ、アメリカの身の上である資本主義に見合う経済活動を活発にすることでも達成するだろう。それは日本の繁栄になり、また日本の平和にもなる建設的な戦略である。政治はこれを目標にするのもいいかもしれない。

これからも国際政治に注目してみたい。次は北朝鮮でなく、中国との軋轢について調べてみたいと思った(尖閣諸島の領有権の問題とか)。

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