分数は、分子 → 分母の順に読むべき

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「2/3」は「にのさんぶん」と読まれるべき。

算数の語順は不自然な語順???

算数で分数を習うとき、「2/3」は「3 ぶんの 2」と読むように教わる。「2/3」では 2 が先に書かれているのに、3 を先に読む必要があるのだ。これはどうもちぐはぐで不自然だと僕は感じる。自然な語順は (例えば)「2 の 3 ぶん」のようであるはずだけど、一体なぜ後ろから読むような非合理な慣習なのだろう?

こう読めばいいのに🤔

理由を調べてみると、どうやらこの語順は中国語に由来するらしい。1971 – 1991 年に京都大学 教養学部の教授を勤めた森毅 (もりつよし、1928 – 2010) による 1989 年の著作『数の現象学』に次のような記述があるそうだ (原典でなく孫引きで堪忍🙇)。

日本では中国分数の『三分之二』が原形にあるのに対して、ヨーロッパではギリシャ分数の『2:3』という比が原形になっているから

なぜ英語は分数を分子から読むか?:『数の現象学』森毅、朝日選書 – さて次の企画は

なるほど、日本語の分数の読み方は (現代の標準的な数学が発明された) 西洋に由来しないから、言い回しが不自然と分かった。とは言え、これは非合理な語順を今から合理化することを妨げる理由にはならない。ぜひ分数の読み方を分子 → 分母の順に変えましょう👍

そもそも分数の読みには揺れがある

分数の読み方には揺れがあるのを知ってますか?現状でもすでに、分数の読みには複数の流派があるんです。この事実を知れば、自信を持って分数の読み順の流派を提唱できるかもしれないね。この記事を読めば、分数の合理的な読み順を採用したくなっているでしょうから。

歴史的に帯分数の読みは 2 種類あった。例えば 9 + 3/4 を意味する帯分数 \(9\frac{3}{4}\) は「9 と 4 分の 3」とも「9 か 4 分の 3」とも読んでよい。1910 – 1937 年と 1950 年代の教科書では、この両方の読みが紹介されていたそうだ。実際に、イタリアの映画監督フェデリコ・フェリーニの 1963 年の映画『8 ½』は、日本では「はっか にぶんのいち」と読む (イタリア語 (原題) では Otto e mezzo)。

帯分数の読みに流派があってよいなら、普通の分数の読みに流派があってもいいよね? (よね?) 安心して「2/3」を「2 の 3 分」と読もう!(とは言え、前述の「か」方式は現代ではあまり耳馴染み無い。やはり読みの揺れは不便なのかもね…😅)


以下はすべて蛇足。読まなくても良いですよ。

蛇足 1: 普通の日本語の語順は、分子 → 分母

例えば、出店で得た利益を 2 人で分け合うとき、それを何という日本語で表現する?いろいろな言い方がありうるけど、例えば「利益の半分をあなたに渡すね」とか。「半分の利益を渡すね」と言っても意味は変わらないけど、僕にとっては前者のほうがより自然な言い方に聞こえるかな。

「利益の半分」という言い方を分数として解釈するなら、分子 → 分母の順となっているだろう。利益が分子で、半分 (つまり二分) が分母だ。「利益の半分」とは「利益を二分したもの」の意味だから、「利益の半分」は「利益の二分」というわけだ。

半分じゃなくて 2 割だとしても、この修飾の語順は変わらない。「利益の 2 割」が自然で素直な語順で、「2 割の利益」はややぎこちない (と、僕は感じる)。これが普通の日本語での自然な語順だ (ここ、異論はあるかもだけど)。

「2 割」を「0.2」つまり「1/5」として解釈すれば、「利益の 2 割」も分子 → 分母の語順となってる。「利益の五分」と同義だからね。数が 2 から 5 に変わっちゃうから少し非直感的だけど、「利益の 2 割」は「利益を五分したもの」つまり「利益の五分」を意味していると、理屈としては理解できると思う。

蛇足 2: 横書き文章でちぐはぐな読み

分母 → 分子のように読む現行の慣習では、横書き文章の読み書きで混乱がある。解決案として、斜線の向きを入れ替えて、分数を「3\2」のようにバックスラッシュで書けばいいかもしれない。とは言え、仮にそうしても「2 ÷ 3」のような割り算の入力では依然として 2 を先に、3 を後に書くから、結局不便は完全に解消しない。

蛇足 3: 以前も森毅の言葉を参照していた

分数の読み順の由来で参照した書籍の著者 森毅氏について、僕は以前も同氏の言葉をブログで引用していたことに気づいた。2018 年の記事 お金に関する知識を得た1年 で、森氏のギャンブルに関する数学的な洞察を引用した。4 年前に既に出会っていたとは!

これを引用しました

森氏は参考になるいい言葉をたくさん残してくれているんですねえ。このボットは出典を示してないから、本当に森氏の言葉かどうか検証不能ではあるんだけど。

蛇足 4: 掛け算の読みが、現行の読み順を正当化する?

現状のように、分母 → 分子の順で読むことを正当化する理由が 1 つだけあるとすれば、掛け算の読みかもしれない。「6 * 2/3」のような式を「6 かける 3 ぶんの 2」と読むと、自然な日本語の語順として「6 を三分した 2 つぶん」と解釈できそうだ。

しかしこれも、分子 → 分母の順で読むことを妨げない。「6 * 2/3」を従来とは逆に分子 → 分母の順に「6 かける 2 の 3 ぶん」と読んだとて、「6 かける 2 を三分したもの」と自然な日本語の語順で解釈できる。「6 かける 2」をひと塊と見て、「それを三分したもの」と読む感じ。

分子 → 分母のほうが分かりやすいと僕は思うけど、皆さんはどうでしょう?こうして見ると、分母 → 分子の順で読むことの不自然さの正体は、目的語の欠如のような気がしないでもない。知らんけど🤣

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