謎、また謎。頭脳と肉体で立ち向かう、挑戦と発見の傑作 SF 長編 – 書評 2024 Q4

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プロジェクト・ヘイル・メアリー [上] [下]

2021 年の SF 長編。表紙から分かる通り、宇宙を探索する宇宙船の中で物語が展開される。このブログを読んだ人が最大限楽しめるように、物語に関してできるだけネタばらししたくない。僕も人に薦められて読み始めたけど、何も知らずに読んだからこその興奮を楽しめたので!

プロジェクト・ヘイル・メアリー [] []

物語とは直接は関係ないけど、なぜ現在の主流の科学者が (地球生命も、宇宙生命も含めて) 生命には水が必要だと考えているのかを紹介しよう。僕が理解してるのは次の 3 点。

  1. H2O は宇宙にありふれた元素で構成されるため、全宇宙に普遍的に存在する
  2. H2O は同程度の分子量の物質に比べて沸点が高く、(相対的に) 高温でも蒸発せず液体である
  3. 生命とは化学反応であり、化学反応は温度は温度の高い液体中で起きやすい
    • 固体中では分子が移動しづらいため、気体中では分子の密度が低いため、化学反応は起きにくい
    • 環境の温度が低いと反応の活性化エネルギーを得づらく、化学反応が起きにくい

これより詳しいことは阿部豊先生の『ハビタブルプラネットの起源と進化 第 1 回』等を参照してほしい。そもそも僕の知識も、こうした学術誌から学んだものだ。これは日本惑星科学会の学会誌『遊・星・人』の内容で、当誌の既刊号はありがたいことに (すべて?) 公開されてるよ。

物語を読むとき、登場人物の姿を思い浮かべるよね?僕はストラットとロッキーの姿をこんなふうに想像しながら読んだ。ストラットはペーパーマリオ RPG のキノシコワ、ロッキーは初代ポケモンの虫ポケのアイコンだ。ロッキーの姿は、本当はこれとは全然違うように描写されてるけどね 😅

読みながら想像した登場人物の姿

以下は 2024 年 Q4 に読んだ書籍の感想です。プロジェクト・ヘイル・メアリーとは関係ありません🙏

数学の大統一に挑む

ソ連出身の数学者の半生と、彼の数学的な興味を解説したドラマチックな本。本書の主な話題であるラングランズ・プログラムとは、代数、幾何学、数論、解析という大きくかけ離れて見える数学の領域の間に、さらには量子物理学の世界にまで、胸踊る魅力的な繋がりがあるという刺激的な予想だ。

数学の大統一に挑む

DARPA (国防高等研究計画局) から 3 年間で数百万ドルの助成金を勝ち取った話は熱い。純粋数学として史上最高額のこのプロジェクトは、ラングランズ・プログラムと量子物理学における双対性との関係に焦点を絞った。純粋数学とはいえ、応用を見据えている。

氏の短編映画『愛と数学の儀式』(2010) の心を少し掴めた気がする。我流の物理学や化学は存在しない。現実の現象を説明しないなら、単にそれは間違った理論だ。しかし数学は違う。我流の数学を創始し、その体系の中で思考する自由がある。この懐の広さは、愛に通じる… と僕は解釈した。

むしろ私が言いたいのは、数学には、ほとんどの人が思っている以上に深くて豊かなものがあるということだ。特に数学は我々に、互いに愛し合い、周囲の世界を愛するための理性と、新たな力とを与えてくれる。

著者 Twitter から
数学の大統一に挑む

ところで、本は映画を美しく説明するけど、YouTube で見た映像の印象は奇妙、あるいは悪趣味…😅

全脳エミュレーションの時代 (上)

「もし人間の脳を正確に再現するプログラム “EM” が存在したら?」と仮定して未来を想像した本。博識な著者による妄想は、様々な豆知識と関連付けられていて知的好奇心 (?) を刺激する。しかし、内容はほとんど著者の妄想垂れ流しで、信頼に足る未来予測として受け取る読者はいなさそう。

全脳エミュレーションの時代 (上)

そもそも EM (= 全脳再現プログラム) を実行する計算機は、誰が何の目的で運用してる?それを直視せずに、EM の経済やら人生やら社会構造やらを議論するのは空虚この上ない。例えば僕が EM を自分の PC で実行すると儲かるなら喜んで運用するかもしれないけど、そのあたりの説明がすっぽり抜けてる。

他の雑多な感想を列挙しよう。

  • 「次の時代のコミュニティの人口はおよそ一兆になるだろう」というのは、人口学の知見を軽視した雑な推論だ。例えば国連は、世界の人口は 2024 年の 82 億人から 2080 年代半ばには 103 億人でピークに達し、今世紀末までに 102 億人になると推計している
  • 「IQ が 2 倍に増加」という表現があるが、不適切。IQ は間隔尺度であり、比 (2 倍とか半分とか) に意味はない (参考: 尺度水準)。ちょっと揚げ足取り的ではあるけど
  • 可逆計算の概念は初耳で勉強になった。ただ軽くググってみて、それほど有望な技術ではないような印象を得た。あと 1968 年に書かれた『紀元 2000 年 – 33 年後の世界』は未来を高い精度で予測したそうだ

読んで連想したのは、5 億年ボタンの裏設定。5 億年ボタンを押すと、押した人と同一の人格を持つ EM がこっそり作成される。仮想空間で 5 億年間を経験するのは、その EM だ。ボタンの提供者は 100 万円を押した人に支払うが、対価として 5 億年を経験した EM のログを秘密裏に収集している… 的な裏設定。これは本に書かれた内容じゃなくて、僕の連想ですのでご注意 (笑)。

第二次世界大戦 1

強力な統率力と強靭な抵抗精神でイギリス国民を指導し、第二次世界大戦を勝利に導いた歴史的な政治家チャーチル。本書は、歴史の舞台に直接参加した彼の手による、最も信頼すべき最高の第二次世界大戦の記録だ。深い歴史観に基づく著作活動によってノーベル文学賞を受賞した彼の歴史物語を堪能できる。第1巻は、一九一九年から第二次世界大戦勃発の翌年までを描く。

第二次世界大戦 1
第二次世界大戦 1

内容は極めて高度で、歴史素人が読むのはかなり難しい。僕の記憶にあるのは上に書いた程度で、ほとんど内容は頭に入っていない。ただでさえ高度かつ専門的な内容が、格調高い言い回しでより難解になってるのよね…😅 適当な箇所から抜粋してみると、次のような感じ。

この調整委員会には三軍参謀首脳と軍部大臣全員が個々の委員として出席していたが、三軍の参謀首脳たちは常に共同歩調を取ってくれる所管大臣に支持された。礼儀正しい会話が豊富に交わされた後、列席していた書記官が最後に如才なく報告を起草し、そこに食い違いなどのないよう軍部三省で検討された。

第二次世界大戦 1

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