【ことわざと心理学】実験心理学に関する分かりやすいレビュー!

学問的,非常に読み応えがある.

テーマからして興味深い

この本は「このことわざは科学的に正しい」とか「このことわざは間違ってる」とか言いたい本ではない.ことわざを検証することを通して,心理学的な発想方法,検証方法を学ぶための本.その点で非常に面白いトピックだらけで,全編を通して僕の興味関心を引き続けたし,実験心理学の発想に触れられた気がして非常に満足度が高い.
アカデミックな雰囲気の「心理学」に興味のある人におすすめかな.ざっくり説明すると複数の論文の主張をまとめた「レビュー論文」みたいな本,と言えば分かりやすいかな?

レビュー論文は未発表の研究を報告するのではありません。トピックに関する理解の現状を説明するため、そのトピックの先行研究をまとめたものです。
レビュー論文は、先行研究の知見をまとめていることから,読者はその領域で発表された研究をすべて読まなくても、既存の知識を理解することができます。

全体は10個の小節(というか,「講座」ということになっているので「第1講」から「第10講」まで)で構成されている.

  • 第1講 霊の正体見たり枯れ尾花
  • 第2講 目は口ほどに物を言う
  • 第3講 親は無くとも子は育つ
  • 第4講 急いては事を仕損ずる
  • 第5講 地震雷火事親父
  • 第6講 備えあれば憂い無し
  • 第7講 泣く子と地頭には勝てぬ/病は気から
  • 第8講 笑う門には福来る
  • 第9講 赤信号皆で渡れば怖くない
  • 第10講 知らぬ顔の半兵衛
(例) 第6講:備えあれば憂いないのか?

僕が特に気に入ったのは「備えあれば憂いなし」の講.予測可能な電気ショックを与えられたネズミと,予測不可能な電気ショックを与えられたネズミの胃の潰瘍の長さを測定した(同時に電気ショックを与えられていないネズミの潰瘍長さも測定された).胃潰瘍はストレスによっても引き起こされると考えられるから,潰瘍の長さはストレスの指標として解釈することが出来る.
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すると予測可能な電気ショックを与えられたネズミの潰瘍長さは,予測不可能な電気ショックを与えられたネズミの潰瘍長さの半分以下だった(電気ショックを与えられていないネズミの胃潰瘍の長さはさらにその半分以下.ゼロではない).
ショックを事前に予測できることがストレスの軽減にいかに効果的かを見ることが出来る興味深いデータ.こういったデータをたくさん示している,非常にアカデミックな雰囲気を持った本です.この講ではストレスにどう対処するのが良い方法なのか,具体的な研究結果を示している.
例えば手術前の子供のストレスを緩和するためにはどんな方法が有効か?実際に手術を受け,無事に退院した過去の患者の事例をまとめたビデオを見せることは,手術と無関係な自然情景・旅のビデオを見せることよりもストレスを緩和するという研究結果があるそうだ.
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これらのことから「備えあれば憂いなし」という先人の知恵はどうやら本当らしいということが示唆されるね.こんな感じで,ことわざの知恵を科学的に検証するのがこの本の内容.

科学的な検証に耐えることわざ

このように多くの研究を参考に,ことわざの当否を検証するのがこの本の趣旨.ことわざが意味するところは多義的で,研究は非常に限定的なことしか結論しない(上の子供のストレス緩和で言えば,「ビデオAはビデオBよりストレスを緩和する」と言っているけど,だからといって「備えれば憂いは無いね」とは早急に結論を出せない).

僕は心理学を専攻で学んだことがないから詳しいことは知らないんだけど,心理学は少なくとも実験心理学的なものと社会心理学的なものがあるらしい.で,著者の今田さんは実験心理学側の専門家.でも僕は心理学のことをよく知らないから,この本で書かれたことを以って「心理学ってこういうものかぁ,面白いなぁ」と思った.まぁ結論は面白かったということ.

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