在日伊人達
クリリス・インカク(ITALY)は冒険が大好きな少女だ。精神年齢は純粋無垢なお子様と等しいが。冒険好きのクリリスはいつも学校の帰り道には寄り道をしている。
金を賭けた帰り道、
水を掛けた帰り道、
二人で駆けた帰り道、
心に橋を架けた帰り道、
そして彼氏の欠けた帰り道……。
色々あった。そんななか、命を懸けた帰り道もしたこともある。今日はその話から始めよう。
その日クリリスはテストを返された。『22点』。赤点である。しかしクリリスは気にしない。赤点だろうと紅一点だろうとクリリスには関係無いのだ。クリリスはただ帰り道に冒険を出来れば、それだけで良いのだ。
今日はクリリスの寄り道第500回記念だ。いつも以上に冒険しようと思っていた。だから彼氏のキトゥ・インケには是非勇姿を見せたかった。
一緒に帰ろうか、誘うキトゥにクリリスは快く首を縦に振った。しかしキトゥのその顔はどこか悲しげだった。
今日は渓谷に行こう。あの谷には橋が架かってない。そこに橋を架けて、二人の心に橋が架かればいいなとクリリスは思った。
しかし行ってみるとそこは地獄絵図のような景色だった。持ち物はロープ2本。渡れそうにない。そんな時クリリスの冒険心に灯が点くのだ!1本のロープを対岸に投げて木に引っ掛けて、そんでこっちに結んで……♪
『もうやめよう』
おもむろにキトゥが口にした言葉はクリリスには『早く帰ろう』に聞こえた。
『お前はいつもそうだ。一人で危ないことに夢中になって、俺は置いてけぼり。もう付き合いきれねえよ。
…もうやめよう。』
キトゥは行ってしまった。安全なことに夢中ならいいのかな。二本のロープなら疲れないし、いいのかな。
クリリスはどうしようもないバカだった。
さて、次の日クリリスは剣道の国際大会に出ていた。日と伊の試合だ。クリリスは日本が大好きな人で、剣道を始めたのもそれがきっかけだった。
試合中、クリリスはコーチに言われた。お前は大振りしてはいけないよ。”一本”を取りにいけば、ムラの多いお前の構えなど、相手の付け込むチャンスなのだ。相手は”突き”が得意だそうだ。”一本”を取りにいくのは危ない綱渡りだ。”突き”を食らわぬように、無難にやれ。大丈夫。相手が日本であればいけるさ。あんなに研究し尽くしたじゃないか。
試合には勝った。
クリリスはここ二日間の想いを短歌にした。日本好きのクリリスは短歌も嗜むのだ。
渓谷、また国際大会にて
『一本の
危ない綱を
渡らずに
にほんであれば
つかれはしない』