どうぶつしょうぎは後手必勝

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どうぶつしょうぎでは,先手後手が互いに最善手を指し合うと78手で後手が必ず勝つということが計算によって判明している.これがその全貌.

まずは最善手をご覧ください

下の動画はどうぶつしょうぎ名人 (← CPU が後手) に最善手を指し続けた棋譜.

これが最長

どうぶつしょうぎ名人の説明欄には次のように書かれてて笑った.

どうぶつしょうぎ名人には勝てません。

どうぶつしょうぎ名人
勝てません…

最善手の解析

最善手については東京大学情報基盤センター准教授の田中哲朗氏のサイトを参考にした.先手が取りうる最初の4手がそれぞれどんな結末になるのかが完全に示されてる.

  1. 初期局面から「C3きりん」
  2. 初期局面から「C3ライオン」
  3. 初期局面から「B2ひよこ」
  4. 初期局面から「A3ライオン」
盤面と見比べてね

将棋の解析はいずれ完了するか?

2020年6月28日に行われた渡辺明 – 藤井聡太の棋聖戦五番勝負第2局で藤井さんが指した58手目,3一銀がすごいということで話題になった.将棋ソフト『水匠』開発者の杉村さんが,「今日の藤井さんの58手目は,将棋ソフトが6億手も先読みさせないと出てこない深遠な手だ」と評したことがきっかけ.

絶賛

これに対し,加藤一二三氏が「棋士の閃きを軽視し,ソフトウェアを絶対視する今の風潮には歯痒い想いがする」と苦言を呈したんでした.

これが発端

さて,これについての僕の感想を言いたいがために,わざわざどうぶつしょうぎなんかを持ち出したのでした.ここからが本題笑.

将棋の可能性は高々有限

数学的に、将棋は二人零和有限確定完全情報ゲームだと思って良いでしょう.Wikipedia によれば千日手のルールの不備のせいで厳密には有限ではないらしいが,基本的には有限だと言える.

二人零和有限確定完全情報ゲームの特徴は、理論上は完全な先読みが可能であり、双方のプレーヤーが最善手を指せば、必ず先手必勝か後手必勝か引き分けかが決まるという点である。

実際には選択肢が多くなると完全な先読みを人間が行う事は困難であるため、ゲームとして成立する。

二人零和有限確定完全情報ゲーム – Wikipedia (改行/強調 筆者)

将棋がゲームとして成立している (ように見える) のは,人間の先読み能力には限界があって,「理論上の完全な先読み」を達成し得ないからだ。それは Wikipedia に書かれている通り。無限の先読み力を持った全知全能の存在 (例えば神) を想定してみると,その存在にとって将棋は「よく考えてみたら、これ先手 (あるいは後手) 必勝じゃん.ゲームとして成立してないやんけ」という感じに見えるはず.

僕の感想

本質的には「解ける」ゲーム

実は将棋も、どうぶつしょうぎと同じで,先手後手が決まった時点で勝敗もすでに決まってる。将棋はゲームとして一切の不確定性がなくて、決定論的だからね。ある盤面での「最善手」は決まっていて、それ以外は全部ミス.二人零和有限確定完全情報ゲームとはそういうものだ.

将棋は,絶対に,確実に「これが正解」と断言していい「正解」があるゲーム。実際にはまだ人間は「正解」を知らない。けれども、正解は確実にある。それを忘れちゃいけない.「より良い手」が確率的に決まるポーカーとか麻雀とかとは全く違って,どちらかと言えば「1+1=?」に似てる.

正解に近いのは機械か?人間か?

それで、大事なことは「まだ我々は知らないけど確実に存在している「正解」に近いのは人間か?機械か?」という点.もう2020年の現在ではすでに人間より機械のほうがその正解に近いと言えるでしょう。 であれば藤井さんの手を機械の手によって評価するのは、そんなにおかしくないと思う.

現状を例えて言うなら、 どうぶつしょうぎが後手必勝と知らない人が「どうぶつしょうぎ名人」と対局しいて、その人が理論上の最善手を指したときに「お、それはいい手だね」とどうぶつしょうぎ名人が言うのに似てるかな?どうぶつしょうぎとの違いは、

  • どうぶつしょうぎの例:
    • 人間は「答え」を知らない
    • どうぶつしょうぎ名人は「答え」を知ってる
  • 将棋:
    • 人間は「答え」を知らない
    • 機械もまだ「答え」を知らない

この類推が成立すると考えてよいほど、人間 – 機械 間の「答え」への近さには隔たりがあると思う.

つまり,いずれは「どうぶつしょうぎ名人」みたいな感じで「将棋名人」という究極の将棋AIが開発されて,その注釈にはこう書かれることになるはずなんだよね.「将棋名人には勝てません。」と.

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