正しいグラフの選び方

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圧倒的に数値コミュニケーションスキルが足りない,と感じる.

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例えばこのグラフね

読んだ本への不満

僕は先日『MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣』という本を読んだ.この本に関する「いい点」の感想はこの記事に書いた.今回はダメ出し.

この本はいろいろな上場企業の決算書類を読んでみて,そこから彼らのビジネスの正体に迫ろうとする本.このアプローチ自体はビジネスをする上で普遍的に重要で,自社の経営状態の確認や競合他社の動向を調査する時に役に立つスキルだと思う.

でもこの本はところどころに変な記述がある.記述というよりも,「不適切なグラフ」がある.棒グラフで書くべきでデータが円グラフで書かれてるとか,折れ線グラフで書くべきデータが散布図で書かれてるとか,とにかく「センスが悪い」.それを2例だけ挙げて説明したい.

数値のみの表はグラフ化すべき

まずはこれ,この画像の箇所.トヨタと日産とホンダの利益率の比較を行っている表.こんな数値を並べて見せられても読み取るのは難しい.

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分かりづれー…

この直後に,「どの自動車メーカーも製造販売よりも金曜事業のほうが利益率が高い」ということは「一目瞭然」とか書かれてる.どこが一目瞭然なんだよ!数値見ただけでそれぞれの大きさ比較が出来るほど人間の認知能力は優れてないぞ!

見ていただければ一目瞭然ですが

MBAより簡単で英語より大切な決算を読む習慣

だからデータを視覚的に表示できる「グラフ」というものがありがたいんだぞ.明らかにグラフで表示したほうが「一目瞭然」だ.これなら誰が見ても,1秒もかけずに「うん.グレーより赤のほうが,どの企業でも大きいね」とすぐに分かる.

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分かりやすい!

しかも「日産だけは,トヨタ・ホンダと比べて金融の利益率が高い.ビジネスモデルが少し違うのかもしれないな」ということすら一目見て分かる.表じゃそこまで読み取るのは難しい.難しいというよりも,面倒くさい.

棒グラフは万能じゃない.折れ線が適する場面もある

さっきの例は「表じゃなくて棒グラフを使え!」だったけど,今回は「棒グラフじゃなくて折れ線グラフを使え!」です.時系列データ,何らかの数量の時間的推移を追ったデータなら折れ線グラフが適している.

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該当のグラフ

これを見せて,以下をを読みとらねばいけなかったらしい.

2013年頃は

  • ケーブルテレビの加入者数 > ブロードバンドの加入者数

だったのが,2015年頃には

  • ケーブルテレビの加入者数 < ブロードバンドの加入者数

と逆転しているのが分かります。

とあるので,逆転してる時期がそれほど見やすい表示方法じゃないのに.

グラ府2
よく分かるグラフ

折れ線グラフで書いたほうが,主張したい「逆転」が明瞭に認識できる.線の交差部分を探せばいいだけだから.実際には2014年の第2四半期ですでに実現していることがこれを見れば分かる.なぜ筆者は2015年に逆転が起きたことにしたかったのか分からないけど,そういったことまで見えてくる.

何でこんなにもデータの示し方が下手なのか.僕の推測は「下手なゴーストライターを雇ったせいで内容の品質が劣化した」と言うもの.筆者自身の優れた経歴を考えれば,どう考えても筆者自身がこれを示そうとするなら適切なグラフの選択ができただろう.できなかった理由はだた1つ,「別の人が書いたから」だと思ったりしてる (事実所なる可能性があります!これは単なる僕の「解釈」でしか無いことに注意!)

そもそもグラフにごまかしがある?

というか,本に掲載されている2個めの例,テレビとブロードバンド契約数のグラフにはごまかしすらある.僕は上では本に載っているグラフに近づけるために敢えて縦軸の値域を「45 – 55」にしたけど,こういうグラフを書くときには下端を0にするのが好ましい. (追記: 折れ線グラフの下端は0でなくてもいい.棒グラフの下端は0のほうが良いけど)

グラ府3
下端を0にした折れ線

実際に,縦軸の下端を0にしてデータを表示するとこうなる.逆転があったとは言え,これがどれほど深刻なのかは判断しかねる程度に近い値で推移していることが分かる.縦軸の値域に0を含めないことで意図的に2つの値の比の印象を操作できちゃうから,こういうグラフを書くときには縦軸の下端を0にするのが好ましい (と,少なくとも僕は思う). (追記: 棒グラフの下端は0のほうが良い.なので書籍のグラフは筋が悪い)

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下端は0なのか?

ところが,もう一度上掲の図を見て欲しいんだが,本に掲載のグラフには,あろうことが縦軸がない.上端と下端がそれぞれいくらなのか全くわからないような書き方になってる.一体なんだこれは?

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下端は0… ではないのか?

下端を0にしたグラフ (僕が作成) と,本に掲載のグラフを重ねてみるとこうなる.ちょっと見づらくて悪いね.2015年の第3四半期のブロードバンド契約者数の位置を揃えて重ねてみた.するとどうだろう,なぜかずれてる.実は本に載ってるグラフは下端がゼロじゃないから,2つの数値の比の印象が操作されてる.実際にはちょっとした数値の上下変化しか無いのに,下端をゼロにしないことで過剰に誇張されてる.

正確性を欠いた表示を選んだのはどういう理由なんだろう.なんとも納得行かないね.

グラフは正確に書きましょう

数値を人に見せるとき,表や文章で見せるよりもグラフで書いたほうが良い.しかも,グラフなら何でも良いわけじゃなくて,それぞれデータごとに最適なグラフが存在する.それをきちんと選んで表示しないとだめだよ.勉強してください…

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