講演と書籍で異なる「良い構成」

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去年ある人が担当した講演会の今年の登壇を僕が担当することになった.しかし去年の担当が作ったスライドがひどかったので,それを僕が自分で修正して講演しましたという話です.

スライドの分解再構成は,実は楽しい

講演は「聞けるように」構成すべし

前任者が作ったスライドの中身はかなり充実してた.しかし配分が悪いと思った.話せばいくらでも時間を使えるような価値の高い話題が前半に集中していて,価値が低いとは言わないまでも,かなり取り留めのない補足的な情報の羅列が後半に延々と羅列されてるような構成だった.こういう構成って書籍では通用するんだと思うんだよね.話題ごとに集中させて,補足的な情報が後半にある種「付録」としてついてると,何が本論で何が本論でないかが分かりやすいもんね.

でも講演は講演であって書籍じゃないでしょ.補足的な情報であっても,話すんであれば飽きられないように話す工夫が欲しいじゃないですか.たぶん前任者の講演は前半は興味深い話題が集中していて面白かったと思うんだけど,後半は尻すぼみ的に退屈になってたんじゃないかと推測する.実際には去年の講演の録画とかないので見てないから分からないんだけどさ.

スライドの構造を大改造

僕は前任者のスライドの前後半をあえて混ぜ混ぜにして再構成した.具体的に言うと,前任者のスライドの構成では面白い話題が前半に2つ (スライドが各12枚と14名),退屈な話題が後半に1つ (スライドが47枚!) あったのを,全体を6分割 (スライドが各12枚.1つだけ例外的に13枚) して,その中に面白い話題と退屈な話題を散りばめた.

改善前後の比較

「これが結論です!」というのを明示的に説明するスライドもわざわざ新たに追加した.結局何を理解したらいいのか分からないプレゼンテーションほど聞いてて混乱するものはないもんね.実際,前半にあった2つの面白い話題 (上図の赤の話題) が相互にどう関連するのかも微妙に分かりづらかったし,退屈で量が倍もある後半のセクション (上図の灰色) の論旨もそんなに明瞭じゃなかったから,それらの行間 (スライド間?) を独自に補うのは不可欠だったと思う.

スライドの再構成に Inkscape が便利

スライドは Google スライドで作ったんだけど (と言うか前任者が PowerPoint で作ったスライドを Google スライドに変換してから編集したんだけど) ,論旨を整理するためにスライドを一覧したいと思った.紙に印刷しちゃえば一覧性は高いでしょうけど,まぁいまどき紙に印刷してもね.と思って,

  1. Google スライドを PDF で書き出して,
  2. それを PDF to PNG でスライドの各ページを画像化して
  3. 各スライドの画像を Inksacpe に並べてみた.
スライドを Inkscape に並べた図

たくさんの画像を一気に Inkscape に取り込むとかなりメモリを食うけど,それでも「一覧できること」「それを自由自在にレイアウトできること」のメリットはすごく大きい.「このスライドとこのスライドは意外と論旨が近い」とか「これとこれが並んでるということは,この辺のスライド群の趣旨はつまりこうだな」とかの作業を効率的に進めることができた.

実際,メッセージの不明瞭なスライドを並べ替えて,無意味から意味を作り出すとも言える作業をするのはかなりクリエイティブな仕事と言えるよね.なので Inkscape のようなクリエイティブツールが「スライドの趣旨の明確化」のような目的に適してるというのは,意外にも自然なことなのかもしれないね (?).

他にもある… だめなスライドの修正作業

スライドの中にはウェブページ (?) をスクショしたような画像がペッと貼られてるだけのスライドとかもあった.スクショ画像が貼られてるだけでも問題ない場合もあるけど,問題アリアリの場合も当然ある.画像として写ってるものがぜんぶ文字の場合は,画像だとコピペもできないし検索もできないから使い勝手が最悪なんです.文字データを掲載するなら文字データとして掲載すべき.

なので単なるウェブページ (もしかしたら何らかの PDF 資料かもしれないけど) のスクショ画像から,文字を拾ってわざわざタイプし直すということもやった.本当にめんどくさいけど,公演終了後に聴衆にスライドの PDF を配布する予定だったから,どうせなら資料価値の高いものを提供したい.そう思うとやっぱり資料価値の低い画像貼っただけは避けて,きちんと文字を文字として入力する必要があった.あーめんどくさ.

▲こうやって画像で見せられても不便でしょ?

そうすることによってスライド全体の文字数は20,320 字から27,658 字に36%増えた.僕はスライドの中の文字数は基本的には少ないほど良いと思ってるので字数が増えるのは不本意だけど,あまりにも手抜きなスライドを残すよりは絶対に資料価値を高めたスライドのほうがマシだと思い,わざわざ画像を文字化しました.それによって画像は59枚から 27 枚に,54 %も削減できたのは成功だったと思う.

変化を適当にグラフ化

なぜ文字の画像化が悪いか?

Twitter で流行ってる (流行ってた?) 質問箱サービスってあるけど,あれって質問文が画像になってるじゃん.画像になってると目の不自由な人にとって質問文が何だったのか確認が難しくなる.質問文がもし文字のままなら OS の画面読み上げ機能が使えるけど,画像になっちゃうとそれはもう文字じゃないから「読み上げる」のは不可能でしょ.そういう意味でも「文字の画像」って基本的には歓迎すべきものではないと認識してます.

結城さんも文章の画像化について懸念してた
アクセシビリティに良くない!
結城さんに気づきを与えたらしい元のツイート

まあ大変だったけど楽しかったので,ここに記録を付けて処理し終わったことにしよう…!

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