米豪英語の面白い発音揺れを Slack で観測した

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英語ネイティブ間で emoji の解釈が割れた

アメリカ人とオーストラリア人で emoji「🪚」の解釈が違ってて面白かった。A さん (豪) が Slack に投稿した「足が痛いから診てもらって来る」に対し、B さん (米) が「🪚」と「🦶」のリアクションをした。A さんがその意味を「sore foot (足が痛い)」か「saw off your foot (足を切り落とせ)」かで迷っているのを見て、B さんが更に「👉」(つまり saw off your foot) とリアクションしていた。

Slack の会話 (ちなみに、画像中の C さんは日本人)

🪚 はノコギリの絵文字で、英語にするなら saw だ。A さん (豪) が 🪚 を見て sore を連想したのには驚いた。僕には全くその連想は働かないけど、英語話者の脳内では saw と sore は繋がってるのか… と。しかし後日、たまたま見た YouTube 動画でこの件に関する体系的な学びを得た。東南世界の英語では、綴られる R を無視したり、逆に綴られない R を発音したりするらしい!

割り込みの R – 無かった R が語末に生える

東南世界の英語の発音には「割り込みの R」という現象が見られる。ここで言う「東南世界」とは、UK の England と Wales、そして Australia と New Zealand のことを指していて、対比される「北西世界」には UK の Ireland と Scottland、そして US と Canada が含まれる。「割り込みの R」は、特定の母音で終わる単語の語末で、綴りには存在しない R が発音される現象のこと。下の動画が詳しい。

割り込みの R を解説した動画

割り込みの R が発生した要因は、東南世界の英語における語末 R の無視だそうだ。例えば単語 sore は、北西世界の英語 (以下、西英語) では /sɔr/ と綴りの通りに /r/ が発音されるのに対し、東南世界の英語 (以下、東英語) では /sɔː/ のように末尾の /r/ を落として発音される。そのため、東英語では saw と sore は全く区別されず、どちらも /sɔː/ と発音される。

しかし直後に母音で始まる単語が続くと、落とされていた /r/ が復活する。例えば sore in the mouth を読むときは、/sɔːinðəmáuθ/ ではなく /sɔrinðəmáuθ/ になる。母音が連続すると聞き取りづらいから、区別のために子音を戻すのだと、参考動画では説明されていた。

そして元々は r の無い単語にも、勢い余って /r/ を付けて発音するようになってしまった。例えば saw in the mouth は、sore in the mouth と同じく /sɔrinðəmáuθ/ と発音される (ことがある)。sore と saw を全く区別しない東英語の習慣が招いたこの R こそ、「割り込みの R」の正体だ。

動画の説明通りの米英語と豪英語!

実際に Slack で観測した saw と sore の混同の会話を、そっくりそのまま具体例として紹介している動画を YouTube で発見したときは、本当にびっくりした笑。動画で紹介する程度には典型的な事例なのかもしれないけど、やっぱり現実に目の当たりにするのと、単に説明として聞くのでは驚きが違うもんね。会話があったのが 9 月 15 日で、動画を発見したのが 10 月 13 日。

確かにオーストラリア人は saw と sore を全く区別してなかった。誰がどう見ても saw の絵文字から sore の可能性を A さんが連想したのは、日頃から sore の /r/ を発音してないからこそだろう。たぶんアメリカ人の B さんは「なんで 🪚 🦶 が sore foot やねん!」と思ったことでしょう😄

Slack で観測した事例は、単に「東英語は語末の R を無視する」の例で、割り込みの R とは関係がない。でもこの例を見ていたおかげで、僕の割り込みの R の理解はすごくスムーズだった気がする。英語は多様だから、勉強していて飽きないね。本当に面白い。

(追記) 「割り込みの R」の定訳 (Wikiepdia) を知らず、当初「侵入的 R」と書いてた。2023-05-25 修正。

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