日本語文字もプロポーショナルになりたい!

全く盲点だった。見落としてた。
文字が多くて字体を揃えるのが大変
日本語はいろいろな種類の文字を使って書かれる。ひらがな、カタカナ、漢字。場合によってアルファベットと数字。これほど出自に共通点のないたくさんの文字種を混在して記述する言語は珍しいんじゃないかと思うね。思うだけで調べてないから信じないでね笑。
アルファベットだけを使う文字圏の人は、コンピュータ上で扱えるフォントの種類が山ほどある。アルファベットは26個、大文字と小文字を区別して52個しかグリフがないからフォントを整備するのが比較的簡単なんだよね。日本語でフォントを真面目に整えようとしたら、その労力は半端じゃない。ひらがなとカタカナだけでアルファベットより多い(ゐとゑを抜いて46個ずつ)。
アルファベットは豊かな見せ方を持つ
フォントを分ける方法は幾つもあるけど、その一つに「等幅」か「プロポーショナル」か、という分け方がある。日本語の典型的なフォントは等幅フォントで、ひらがなもカタカタも漢字も同じ横幅で書かれる。全角の英数字をわざわざ用意して、それらもひらがなカタカナ漢字と無理やり幅を揃えて表示するようにしたりもしてる。

日本語のフォントを作成するのはすごく大変な作業だから、典型的なフォントは等幅だし、創作的・実験的なフォントでプロポーショナルなものは漢字が整備されてなかったりする。一方アルファベットは1つのフォントを作成するために準備するべき文字の個数が日本語に比べてアット的に少ないので、等幅のフォントもプロポーショナルのフォントもたくさん(本当にたくさん!)存在する。

そもそも文字の幅は同じじゃない。どう考えても「W」と「I」が同じ幅である必然性がない。縦棒の数が違うんだから、横幅がそれぞれ異なっていて当然だ。プロポーショナルなフォントは自然。等幅フォントというのはタイプライターを機械的に実現するための制約とか、コンピュータ上で文字を表示する機構を単純化するためとか、そういう目的に応じる形で後から発明されたもの。基本的には文字の幅は、文字ごとに異なる幅を持っていて然るべし。
字体の貧しさが日本語文字に与えた影響?
「W」と「I」を例に出したけど、それはアルファベットだけに当てはまることじゃない。「州」と「し」が同じ幅である必然性は全く無い。縦棒の数が違うんだから、横幅がそれぞれ異なっていて当然だ。でも日本語のフォントって、文字種が多すぎるという問題のせいでバリエーションが多くないでしょ。仕方なく等幅のフォントばっかり使ってるけどさ。

大昔の古文書とか見れば明らかに、文字はそれぞれ異なる幅を持ってる。「し」なんて、ただの縦棒にしか見えない(そのせいで読めない笑)くらい、幅が無い字。でも日本語のフォントはほとんどが等幅フォントで、プロポーショナルなフォントが無い。そのせいで「し」と「州」が同じ幅であることに何の疑いも持たなくなっている。
それについて気付いたのは、下記の論文を読んだ時。とても重要なので、少しだけ引用。
筆者は小学校で文字の書き方を習うとき、正方形の中におさめられた「お手本」を参考にして練習させられた。ここで教えられた文字の形や正方形の中におさめるように書くという方法は、活版印刷が導入されて汎用化が行われた活字の影響によるものだ。
印刷術の世界で変容した字形が人々の間に普及し、手書きの文字に「逆輸入」されたのである。
骨格情報を用いて生成される印刷媒体のためのかな書体の開発 / 山本晃士ロバート
日本語文字は,必ずしも等幅じゃない!
小学校のときからずっと、等幅フォントから逆輸入された字形概念を刷り込まれてきたんだね。本当はそれぞれが異なる幅を持っていて然るべきなのに、「コンピュータ上で文字を表示する機構の都合」などという前時代的な理由、「日本語文字は数が多くてすべて揃えるのが大変」という悔しい理由、これらのせいで日本語の文字幅が「すべて同じで当たり前」になっている現状がすごくもったいないと思う。

この記事はそれを憂う記事でした笑。どうにかして論文の引用した箇所が主張する内容を、広くしらしめることができたらいいんだけどなぁ。