【いま世界の哲学者が考えていること】考えるべき名テーマ集

最終更新日

今,世界を見て自分が考えないといけないこと.

いま世界の哲学者が考えていること

哲学の初心者が,今考えるべきテーマ集として

哲学というものに最近興味が湧いてきた.というのも,大学・大学院と哲学を専攻した人と最近話して,その重要性と面白さに気付いたから.僕は大学2年生くらいまでは結構本気で「文系科目って何のためにあるんだ?無くても良くない?」とか思ってたので,この変化は僕の中では画期的な変化.

で,読んだのは「いま世界の哲学者が考えていること」という本.内容は主に以下のトピックを中心に書かれてる:

  • 「哲学」の最近の変遷 (20世紀の変遷かな?)
  • ITと哲学
  • バイオテクノロジーと哲学
  • 資本主義と哲学
  • 宗教と哲学
  • 地球環境と哲学

どれも非常に面白いトピックだった!これを見ても,おそらく大学生の僕は内容がピンとこなかっただろうと思う.今は何となく想像がつくけれど,それは (この本を既に読了しているから,という理由の他に) 哲学への関心が以前に増してずっと強いからだと思う.

全体に関して感想を書くと長くなっちゃうから,この記事では1つに絞って感想を書こう.何を選んでも良いんだけど,やっぱり一番面白そうな3章の『バイオテクノロジーは「人間」をどこに導くのか』について.

人間を選別するのは「正しい」か?

僕は生物学を専攻していないから詳しいことは知らない.ただテクノロジーと人間性に関する問題に関してはとても関心がある.この本では「ポストヒューマン」「クローン」「再生医療」「犯罪者」などの切り口から,人間とバイオテクノロジーの交差を論じている.

例えば「優生学」という忌まわしい概念がある.優生学とはナチスが提唱していた概念で (世界中にその例があったそうだが,特にナチスの例が有名) ,それに基づいて「ドイツ民族の改良」の名の下に特定の人種を隔離・抹殺するという恐ろしいことが実現してしまった.

優生学 – Wikipedia

現代の技術の急速な進歩を観察すると「これと同じことがバイオテクノロジーでできてしまうのではないか?」という懸念が湧いてくる.優秀な遺伝子を持つ個体と,遺伝的な欠損があったり特定の病気への耐性が低い個体とを,現代の科学は見分けられるようになっている.

20世紀には「悪い種を根絶やしにする」という穏やかでない方法が主流だったけど,21世紀の現在に優生学的な発想が復活するとしたら.その形は,例えば「子供の遺伝子を選択して,強い子供だけを生む (デザイナーベイビーと呼ばれる)」のようになるかもしれない.これは倫理的に正しい行為なのか?

答えはない.答えを「作る」

もちろん,この問に対する絶対的な正解はない.現在を生きる僕らが考えて選択し,22世紀とそれ以降の時代に生きるであろう人たちの倫理規範を「僕らが」作らねばならない.哲学の面白さはここにあるんだと思う.自分の思考を深め,何が正しくて何が正しくないのかを説明する.そしてそれをいかなるロジックで正当化し,他人の理解を得るのか.

僕の思想は,哲学の文脈では「リバタリアン」と呼ばれるものに近いと思ってる.リバタリアンとはこんな人:

他者の身体や正当に所有された物質的財産を侵害しない限り、各人が望む全ての行動は基本的に自由であると主張する

リバタリアニズム – Wikipedia

僕はデザイナーベイビーの話にも「やりたい人がやればいいかな?僕はどうしようかなー」くらいの感想をまずは持ちます.僕が侵害されないなら,他人が望んでデザイナーベイビーを作るのを僕が止める理由は無い気がしてしまう.

他にも「クローン人間は人権を持つか?」という問も提示されてる.この本の中ではリチャード・ドーキンスの以下の言葉を引いて,人権肯定派の意見を紹介している.

一卵性双生児はクローンであり同じ遺伝子を持っている.一卵性双生児を個性も人格もないゾンビだと言った人はいない.

民主的で自由な世の中を望むなら,誰もが納得する理由がない限り,他人の希望を妨げるべきでない.ヒト・クローンについても,それを求める人が出た場合,禁止を主張するにはクローニングが誰に対しどんな害があるのか,明示する責任がある.

いま世界の哲学者が考えていること

現在は一般的に言ってクローン禁止の潮流が強いよね.実はこれは「クローン差別」になっているという指摘も面白い.僕はリバタリアン風なので「クローンいいんじゃない?」だけど,もっとよくよく考えてるリチャード・ドーキンスも同じ結論なのは嬉しいね.笑

自らの思想を深めるきっかけとして

他にも不老不死の未来とか,犯罪者を生理的に判定できる未来が来るかもしれない.そういった時に,つまり技術が今思うよりも圧倒的に進歩した時に,僕らは技術から導かれる結論と人権をどうすり合わせればいいだろうか?哲学って言葉は「生きる指針」「思考の指針」みたいな意味で言われる事が多いけど,学問としての「哲学」は必ずしもそうではない.

いま世界の哲学者が考えていること

自分の持つ倫理観の根拠を自分でよく分かってる人はどれくらいいるでしょう.僕は自分のすべての思考習慣の根拠を明確に持っているわけじゃないけど,哲学はそれを明瞭化する助けになる.「哲学ってなんだろう?」という初心者の僕でも分かりやすいいい本だったと思う.

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