奥深いスマホ通信技術の世界 – 書評 2022 (下)

2022 年下半期に読んだ本『携帯電話はなぜつながるのか』を紹介しよう。
電話はネットと繋がってない?
携帯電話は MNO の閉域 IP 網の中に存在していて、インターネットに直接は繋がってない。『携帯電話はなぜつながるのか』で最も大きな鱗が目から落ちたのは、この事実だった。MNO (Mobile Network Operator) とは携帯電話の回線事業者のことで、日本なら Docomo と KDDI と Softbank (と楽天)。

スマホが送信したパケットは、MNO の閉域網 (コアネットワーク) を通過してインターネットへ出ていく (受信は逆向き)。本書はモバイル通信網の L2/3 (?) のような低レイヤを始め、電波に乗せる具体的な信号や符号化方式などの L1 (?) の話題も豊富で、知的刺激を存分に楽しめる。
読むときに知っておきたい 2 つ
(1) 3G に軸足を置く本書は、解説書としては少し古い。5G などの最新の通信技術は LTE を基本としていて、3G と異なる点も多い。例えば 3G が対応していた回線交換は、LTE 以降では使用されてない。初刷が 2007 年、2 版の改訂が 2012 年だから、内容が少し古いことは念頭に置くと良い。
(2) OSI 参照モデルなどのネットワーク技術の概観を理解していれば、この本はもっと楽しめると思う。僕はその理解が不足しているから、12 月 8 日に参考書『栢木先生の基本情報技術者教室 (2022)』を購入してみた。基本情報技術者試験の試験勉強を通じて知識が増えることを期待してるけど、まだ巻頭しか読んでない…汗
他に読んだ本は?
ありません😢 この半年は 1 冊しか本を読み終わらなかった。読みかけの本に『チャイニーズ・タイプライター』がある。4000 年の歴史を持つ伝統的な「漢字」と、現代的な情報技術がどのように向き合ってきたかに関する技術と歴史の本。

Amazon に載ってる紹介文を引用するので、興味がある人は買ってみてね。内容は本当に面白いけど、まだ 14% しか読み進めてない僕が紹介するにはまだ早い。
本書の主軸をなすのは、西洋のラテン・アルファベットを基にして作られた「近代」の象徴としてのタイプライターと、中国語との間にある距離感である。その隔たりゆえに中国語そのものに「問題」があるとみなされ、それを克服するための「パズル」が形作られることになる。
常に西洋の「本物」のタイプライターを意識しつつ、この「パズル」を解こうとしていく人々の群像を描いていくなかで、漢字についての発想の転換や戦時中の日中関係、入力や予測変換といった現在につながる技術の起源に至るまで、さまざまな話題が展開されている。
タイプライターというモノを起点としつつ、それの単なる発明史をはるかに超える射程を持った本であり、関心や専門を問わず広く読まれるべき一冊である。
チャイニーズ・タイプライター
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