【魔法の世紀】計算機科学の歴史と,デジタルネイチャーを理解したい

「魔法」とは何か.

「科学」は「魔法」か?

「魔法」って何だと思う?魔法は「常人には不可能な手法や結果を実現する力のこと」くらいの意味でしょ?と本文中で語られてる.その定義に厳密に従うなら,「ボタンを押すだけで,暗闇に明かりを灯せる電球」も「その高低によって,明日の天気を予言する水銀柱」も魔法だ.見方を改めればどんなテクノロジーも魔法だ.
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でもテクノロジーを魔法だとは感じない.それは「仕組みを知ってるから」という一点に尽きる.「電球に電気を流すと動線の抵抗で熱が生じる,その熱がフィラメントを光らせる,だから電球が光る」とか「大気圧が低下すると,平均的には上昇気流が生じる.大気圧は高度が高いほど小さいから空気は断熱的に膨張し,温度が下がる.含まれていた水蒸気が凝結して雲が発生するから,雨が降る」とか.
科学は多くの不思議を明らかにしてきたし,これからも明らかにするだろう.でもそれらは多くの知識を前提として進歩するから,次第に高度化,難化していくことは避けられない.

科学と技術は,もっともっと高度になる

その最たる例がITだ.パソコンやインターネットの仕組みを詳細に説明できる人がどれだけいるだろう?そして,「動作原理を説明することは出来ないけれど,使いこなすことならできる」という人はどれくらいいるだろう?後者の「仕組みは知らないけど,アドレスバーに”YouTube”とタイプしてエンターを押せば,世界中の大量の動画を見れるということは知ってる」ということと,「何でか知らないけど,”バルス!”と唱えると城を崩壊させることができるのは知ってる」ということに,違いはあるだろうか?
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「充分に発達した科学技術は、魔法と見分けが付かない。」とは,作家アーサー・C・クラークの提唱した法則の1つだ.

この本はこれを受けて,今後どんどん高度化していく21世紀の世界予測を「魔法の世紀」と呼んだ.21世紀は,口で呪文を唱えれば何でもできる,魔法の世界になるのかも知れない.
魔法の世紀の「魔法」はテクノロジーに支えられてるのかも知れないが,使用する人はそれを全く意識しない.”バルス!”と唱えれば城が崩壊するのも,きっとテクノロジーだったに違いない(自在に空中を飛び回り,破壊的な光熱のレーザーを放つロボット兵器を実現するテクノロジーが,ラピュタにはあったのだから!).でもシータもパズーも,テクノロジーを意識しない.唱えれば実現する,不思議な「魔法」だと思っていることだろう.

2016年だって,21世紀.既に「魔法の世紀」

2016年でも,近いことが実現されてるね.SiriとかOk Googleとか.これらはもっと高度化して,多くの生活環境と連携する.そしてそれらの技術と人間の境界面は,もっと人間にとって自然な,無意識で操作できるようなものになる.そのとき,技術は「魔法」になる.
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とても面白い本だと思った.実際には,僕が今述べた内容はこの本のごく一部.コンピュータ・サイエンスの歴史を振り返り,未来を予測し,彼のもうひとつの顔である「メディアアーティスト」について語り,彼の提唱する「デジタルネイチャー」という概念の説明をする.とても盛り沢山な内容.読んで損はない,いい本だったと思う.

しかし難しい.理由を邪推

しかし,これはなかなか難しい本でもある.内容が難しいし,日本語表現も難しい.この本が難しい理由を推理すると,2点思い浮かぶ.

  • 初めての本だから,舐められないように虚勢を張った.
  • 落合さん自身の中で,自分の哲学をうまく言語化できてない.

これらについて簡単に書こう.
「魔法の世紀」は,たぶん落合さんの初めての著書なんだよね?だから気合を入れて,間抜けな出来にならないように,あえて難しく書いてる.もう少し噛み砕いて書ける箇所も,わざわざ周りくどく説明してる.至るところから垣間見える彼の知性を以ってすれば,「もっと簡単な表現で同じ意味を書けただろう!」と突っ込みたくなるような箇所が幾つもある.
あえて高尚な風を装って書かれてる.彼のそんな趣味に付き合わなきゃいけないような,そんな感じを僕は受けた.そこが一つ残念な点でもあるけど.
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そしてもう一点.彼自身の哲学が,まだ分かりやすく言語化されていないという問題もきっとあるだろう.彼の言いたいことの半分くらい(ほんとに?笑)は理解できたつもりだけど,確かにそれを表現するための適当な語彙が,まだ日本語には無い.彼は新しい概念を提唱している人だから,それを的確に分かりやすく表現するための最適な言葉を,まだ探してる最中なんだと思う.
概念を言語化することは非常に難しい.でも,概念の言語化には「全体像が明確化される効果」も「人からの理解を得やすくなる効果」もある.概念の言語化は全く無駄じゃない.落合さんには,自身の概念をより端的に表現できる言葉をこれからも探し続けてほしい(そしたらまた本買って読みますから笑).

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