bit のこと日本語で「爻」って呼ぼうよ

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字の形もカッコイイじゃん?

爻とは?

爻(こう)は、易の卦を構成する基本記号。長い横棒(⚊)と真ん中が途切れた2つの短い横棒(⚋)の2種類がある。経では前者を剛、後者を柔と呼ぶが、伝では陽、陰とする。

爻 – Wikipedia

爻は,古代の東洋で (今も?) 占いに用いられる記号のこと.繋がった長い棒 (これを剛とか陽と呼ぶ) と,途切れた棒 (これを柔とか陰と呼ぶ) の2種類が存在していて,電算機に使われる bit とよく似ている (0 は陰に,1 は陽に対応してる感じがしません?).

僕は爻にあまり馴染みがなかったけど,韓国の国旗に書かれてる三爻 (= 八卦) なら見たことがある.それぞれ ☰ (乾: けん),☷ (坤: こん),☵ (坎: かん),☲ (離: り) と言うらしく,8つある八卦のうちの4つだ (これらの他にあと4つある).

韓国の国旗

八卦とは三爻 (爻を3つ組み合わせてできたもの) で,まさに 3 bit で 2³ = 8種類のものを表現することに相当する.Wikipedia を見ると六爻 (= 六十四卦) というのもあり,これも同じく 6 bit で 2⁶ = 64種類だ. bit の概念を翻訳するなら「爻」はうってつけじゃないかな?

電算用語の日本語化は重要だ

ご存知のとおり,電算用語にはカタカナ語が氾濫している.その昔に電算用語を日本語に (漢語に?) 翻訳しようとした人はいるようで,僕が見つけたものだと1974年を懐古した記録が抜群に古い (サイト自体の公開は2004年).要約すると「石井博さんが島内剛一先生と電算用語の日本語訳を議論し,算譜 (プログラムの訳語) を始めとした多くの訳語を生み出した」という話.その中に「bit の訳語は思いつかなかった」と書かれてる.

島内先生が……黒板に「算譜」と書きました。「楽譜(音譜)は音を書き取ったものだ、算法を書き取ったものがプログラムだから算譜だ」と言うものでした。……「算譜」が決まると、「主譜」、「副譜」、「作譜」、「記譜」、「修譜」などが自然に決まっていきました。 ……てこずったのはビットとバイトで、とうとう結論が出ませんでした。

Web Page of 島内の算譜 by H.Ishii

もちろん上に引用した以外でも電算用語の日本語訳については議論されてるでしょうから,僕が知らないだけで,もうすでに bit の良い訳語があるのかもしれない.でももしなければ「爻」はどうでしょう?そんなに悪くないと思う.

byte は?

byte をどうするのかについて,今のところ一貫性のあるいい案はない.普通に「八爻」と書いちゃえばいいとも思うけど,せっかくなら歴史的にも実在していた概念を持ち出したい気持ちがある.「三爻」と「六爻」は実在してるようで,それぞれ「八卦」「六十四卦」と特別な名前まで付いてるんだけど,「八爻」(あるいは「二百五十六卦」か?) というものは存在してなさそうなんだよね…

あるいは「たくさんの “爻”」のつもりで「」とか,逆に「ひとまとめの “爻”」のつもりで「」とかでも面白いかも笑.英語の術語もけっこうシャレで命名されてたりするし (僕の好きなシャレ命名術語の1つは p-brane).

ちなみに中国語では bit を (音訳して?)「比特 bǐ tè」とか「位元 wèi yuán」と書くようだ.位元は「さすが母国語で漢字を使う人々だ」と思わせる迫真の命名だね.byte は音訳っぽくなくて「字节 zì jié」.そう言えば Bitcoin が「比特币」と書かれるのは知ってた気がする.

ライプニッツも「爻は bit」と言ってる

韓国の国旗には上下対称の卦しか使われていないけど,上下対称じゃない卦を含めて三爻を全て書き下せば当然 8つある.卦を書くときは爻を下から順に書くそうなので,卦はビッグエンディアンなんですね.三爻では下から順に 2² の位,2¹ の位,2⁰ の位になってるね.

八卦二進法卦名音読み
111ケン
110
101
100シン
011ソン
010カン
001ゴン
000コン
八卦 – Wikipedia

表は Wikipedia からの引用だけど,卦と2進数との対応が書かれてるのが面白い.どうやら「爻って本質的に bit やんけ!」って僕が思うよりも前から,爻と bit を対応させて考えた人はいるようなのだ.中国語版 Wikipedia の 易経 には爻と bit の関連に関する面白い話が載ってる.

中国有所谓《周易》创造了二进制的说法,至于莱布尼茨受《周易》八卦的影响创造二进制并用于计算机的传说,更是广为流传。事实是,莱布尼兹先发明了二进制,后来才看到传教士带回的宋代学者重新编排的《周易》八卦,并发现八卦可以用他的二进制来解释。

(DeepL 翻訳) 中国には周易が二進法を作ったという主張がありますが、ライプニッツが周易の八卦に影響されて二進法を作り、コンピュータに使ったという伝説については、さらに広まっています。 ライプニッツはまず二進法を発明し、その後、宣教師によって持ち帰られた宋の学者によって並べ替えられた周易の八卦を見て、その卦が二進法で解釈できることを発見したというのが真相です。

易经 – 维基百科,自由的百科全书

中国では「爻や卦を元に西洋人が二進数を再発明した」という迷信があるらしい.迷信はさて置いても「爻と二進数を対応付ける考えが実在している」というのはポイントだ.Wikipedia 二進法にも「爻」について言及がある.

中国には古くから易の八卦や六十四卦があり、それぞれ 3 ビットと 6 ビットに相当している。……ただし、彼らがそれを整数(ないし、数)に対応するとして理解していたという証拠はない。……

数学的に二進法を確立したのは17世紀のゴットフリート・ライプニッツで、……現代の二進法と同じく、1 と 0 を使って二進法を表した。ライプニッツは中国愛好家でもあり、後に「易経」を知って、その六十四卦に 000000 から 111111 を対応させ、彼の賞賛してきた中国の哲学的数学の偉大な成果の証拠だとした。

二進法 – Wikipedia

上に「卦はビッグエンディアン」と書いたけど,実は逆を言ってる記事もある.でもおそらくそれは間違いで,なぜなら八卦に関する画像のキャプションに「此圖中的數值標示有誤,且與卦象並不相符 (訳: この図の値はラベルが間違っていて、トライグラムとは一致しません)」と書かれてるから.でももしかすると,ライプニッツ式では卦と数値をリトルエンディアンで対応させるのかもね.

とにかく「”爻” って binary digit じゃん」ということは,僕が指摘するよりずっと前から考えていた人がいたようなので,いよいよ「訳語は “爻” でいいじゃん!」という気になってくる.そもそも「翻訳」ってそういうことでしょ.外国の言葉や概念を,自国の言葉や概念と対応させることが「翻訳」だもんね!

実は「爻 = bit」を思い付いたのは2016年

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