成熟した技術が、ハードからソフトを剥がす

ソフトとハードの密結合は不便
ソフトウェアデータの共有に、わざわざハードウェアを使うなんて…と呆れた。というのも先日、動画データを読み込み専用 DVD に焼いて所定の宛先に郵送する機会があったのだ。今どき、動画が要るならデータを送れば済むよね?読み込み専用 DVD にイメージを焼き込んで渡すなんて、不便の極み😮💨
ソフトとハードを分離する技術の利便性を痛感した。音楽のために「CD」を買い、ゲームのために「カセット」を買っていた時代も、今は昔。欲しいのは「CD」や「カセット」ではなく、その中身なんだから、不要な入れ物を省略できるならそのほうが便利だよね。

馴染みある金属チップのハードウェア「SIM カード」も最近は置き換えられつつある。スマホを携帯回線に繋げる SIM カードの機能は、eSIM 技術によってソフトウェア化された。2022 年 9 月発表の北米 iPhone では SIM トレイそのものが廃止されたらしい (動画 58:25)。この eSIM 技術は、最近すごく驚いたことの 1 つ。
DVD に不慣れ過ぎて、焼き込みは失敗😂
それでも DVD は焼いて送る必要があったから、Ask Ubuntu で調べて知った DeVeDe NG を試した。DeVeDe (Wikipeida) は Ubuntu (Linux) 用の DVD を焼くソフトで、DVD-Video 形式に対応してる。DVD-Video 形式は普通の映画 DVD とかで使われてる形式で、音声設定とか字幕設定とかのメニュー機能があるアレ。今回は「納品は DVD-Video 形式で」と指定されてた。
DVD-Video 形式のファイル構成では、中に AUDIO_TS
と VIDEO_TS
の 2 つのフォルダが格納される (詳しくは Wikipedia)。DeVeDe で手元の動画ファイルを使って生成した iso
をマウントして構成を確認できたから、iso
への変換は成功のよう。しかし DVD への焼き込みはダメだった🤔 なぜ…

.iso
ファイルDeVeDe の開発は、個人 (?) プロジェクトにしては意外と活発。最新版リリースが 2021-12-28 で、GitLab リポジトリの最終更新は 2022-11-17 (ともに 2023-04-15 現在)。焼き込み失敗の原因は僕の DVD の関連知識の不足にありそう。もし DeVeDe が太古の野良アプリとかだったら、その古さと使い勝手に責任転嫁したんだけど…笑。
ハードは不可欠。それは絶対
情報技術はその進歩の過程で、制約の多いハード的なものを、次第に柔軟で取り回しやすいソフトに置き換えていった。例えば、専用の読取り機を要して保存も嵩張る CD から、クリック 1 つで再生可能で、複製も編集も容易な「ソフト」として音楽を剥がし取った変化は好例だろう。DVD にデータを焼き込んで、せっかく解きほぐされたハードとソフトを再び絡めて不可分にする行為は、技術の進歩に逆行してるように見える。

でも、それだけを見て「ハードウェアって、硬直して不便だよね!」と結論するのは間違ってる。確かに、成熟した技術がソフトをハードから剥がすと便利になる。ただ、その分割の実現には「ソフトウェアを支えるハードウェアの存在」が隠れた前提になっている。例えば、CD からソフトをリッピングするには、CD の代わりとなる記憶装置をパソコン自体が持ってることが前提だ。
ハード無しに、ソフトは実現し得ない。動画が DVD から独立したソフトウェアとして扱えるのは、パソコンがそれを支えるハードウェア的冗長性持っているおかげだ。先述の eSIM も同じく、端末に eSIM 対応のチップ (つまりハードウェア) が無ければ使えない。当然ながら、ソフトウェアだけでは何もできない。
(余談) Ubuntu って、DVD が不得意?
ところで、Linux は DVD を扱うのが不得意?VLC をインストールするだけじゃダメで、こんな関連ライブラリも必要 (参考 Qiita)。Star Wars の DVD 見るだけで不要に手間取ったことがある。
$ sudo apt install vlc
$ sudo apt install libdvd-pkg
$ sudo dpkg-reconfigure libdvd-pkg